2013 Fiscal Year Research-status Report
出生前診断に由来する人工妊娠中絶に対する一般市民意識の調査
Project/Area Number |
23613010
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
中井 祐一郎 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (50271193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下屋 浩一郎 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40291950)
田村 公江 龍谷大学, 社会学部, 教授 (60309119)
浅田 淳一 筑紫女学園大学, 人間科学部, 教授 (50202586)
鈴井 江三子 兵庫医療大学, 看護学部, 教授 (20289218)
中塚 幹也 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (40273990)
林 大悟 玉川大学, 文学部, 助教 (10432890)
新名 隆志 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (30336078)
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Keywords | 生命倫理学 / 出生前診断 / 選択的人工妊娠中絶 / 市民意識 |
Research Abstract |
平成25年度には、出生前診断に由来する選択的人工妊娠中絶に対する市民意識アンケート調査用紙の印刷と配布、回収と集計を行った。 本研究開始当初は、主として超音波断層法による胎児スクリーニングと羊水中浮遊細胞による胎児染色体診断を念頭に置いていたが、母体血液中浮遊胎児DNA断片を用いた新型出生前診断法がセンセーショナルな報道により人口に膾炙されたと判断せざるを得ず、所期の設問とは大きく異なった形に纏めるに至った。 本年8月と9月に配布を行った。一般市民意識を明らかにする目的から、研究代表者と分担者の直接の知人のほか、飲食業、自動車整備業、理容業の責任者、整骨院開設者、産婦人科以外の診療所開設者を通じて配布を行い、更には兵庫県洲本市が主宰する健康大学の協力を得てその受講者を含め、予定期間内に3958部配布した。この期間には前記新型出生前診断に関する報道もほぼ終息した一方で、新たな話題による市民意識の変化が起きるような事案は無かった。郵送による無記名アンケートであるが、11月末日までに1722部(43.5%)を回収し得た。 多項目にわたる回答のほか、自由な記述欄を設けたために集計用の入力に時間を要したが、平成26年2月に集計と数的解析を終了した。 本研究の眼目として、医学者・看護者のみならず、哲学系生命倫理学や女性学の立場からの分析を予定していたことから、研究機関の1年間の延長を行うこととして、数的な解析結果とともに自由な視点からの解析を行うために元データを各研究分担者に送付した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に記したように、本研究所期の対象とした出生前診断は超音波断層法による胎児スクリーニングと羊水浮遊細胞によるものであったが、アンケート用紙の作成過程で母体血中浮遊胎児DNA断片による新型出生前診断が大きな話題となり、人工に膾炙した。このことは本調査の結果を大きく左右するものになりかねないと判断したことから、この事実を踏まえたアンケート用紙の改訂とセンセーショナルといえる報道の鎮静を待って、調査時期を遅らせざるを得なかった。 その結果、アンケートの実施時期が約1年遅れざるを得なかったが、その結果対象となった市民に出生前診断、特に胎児染色体診断に対する意識が生まれていたことから、より有益な結果が得られるという副産物もあると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の特徴である多施設共同による多元的視点からの評価を行うために、医学、看護学、女性学のほかに哲学系生命倫理学を専攻する研究者の参加を頂いた。生命倫理学には多彩な考え方があり、所期の研究者(慾望論)のみでは視点に限界があると考えられ、功利主義や徳倫理学的視点からの考察が可能となる布陣となった。 平成26年度前半に各研究分担者の専門的視点からの考察を行い、研究者会議の開催を経て、最終的な報告書として纏める予定である。 また、現在、日本周産期・新生児学会と日本母性衛生学会での口演発表に応募しているほか、日本生命倫理学会や日本母体・胎児医学会で、それぞれ視点を変えた考察を含めた研究成果の公表を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アンケート用紙の作成過程で母体血中浮遊胎児DNA断片による新型出生前診断が大きな話題となり、人口に膾炙したことから、調査時期を遅らせざるを得なかった。 その結果、アンケートの実施時期が約1年遅れざるを得なかったため、各研究分担者の専門的視点に基づく考察を纏める時間に欠くことなり、研究期間の延長を余儀なくされたため、次年度使用額が生じた。 本年度は研究成果の多元的視点からの考察とともにその成果の公表を行う。 次年度使用額を平成26年度請求額と併せて、各研究分担者の視点からの成果の考察結果を議論するための研究会議の開催を行うために、交通費を支出する。 研究成果を纏めた上で、各研究者の立場からそれぞれの学会(日本周産期・新生児学会、日本母性衛生学会、日本生命倫理学会、日本母体・胎児医学会など)での公表のために交通費・学会参加費を支出する。 研究成果の概略を纏めた上で、出生前診断を行う医療機関や研究施設に配布するために、印刷・製本費および送料を支出する。
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