2011 Fiscal Year Research-status Report
沖縄における持続的なワイルドライフ・ツーリズムの構築に関する実践的研究
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23614010
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
大島 順子 琉球大学, 観光産業科学部, 准教授 (40423735)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ワイルドライフ・ツーリズム / 環境教育 / 沖縄島やんばる / バード・ウォッチング / 自然保護 / 自然資源の保全と活用 / ガイドライン / プログラム開発と人材育成 |
Research Abstract |
本研究のテーマである特に野外での希少な生き物との出会いや野生生物を観ることを目的とするワイルドライフ・ツーリズム(以下、WTと略す)は、日本においては未成熟の観光形態である。昨今の自然志向の国民の増加とともに、固有種や希少な野生生物の観察を主とした観光メニューの創出は、新しいツーリズムの構築に繋がるが、同時に観光資源としての野生生物の適切な保護と管理体制の構築の必要性を意味する。上記を踏まえ、第一年度は国外の先進的な調査研究事例の多面的且つ構造的分析を目的として、WTの国外の調査研究の文献の収集ならびに現地調査とヒアリング調査を実施した。その結果、WTを展開する際に当事者らが共通認識を持って取り組むべき事項が明らかになった。それらは、 (1) WTの基本的な理解(定義、一般的なツーリズムとの関係、野生生物の観察という活動の範囲、マーケットの理解、利害関係者との連携)、 (2) WTによる経済的、社会的及び自然環境保護への効果の理解(野生生物観察の経済的価値、貧困克服や地域活性化に対する貢献、自然環境保護のための財源の確保)(3) WTによる野生生物へのかく乱を理解し、最小限に抑えるための体制の確立(野生生物への負荷や危険性、訪問者管理、起こりうる環境影響の管理方法、モニタリング、教育やインタープリテーションの実施)、(4)野生生物への生態学的な負荷を抑えるための研究体制の整備(持続可能なWTを展開していくための計画)である。 また、野生生物の観察という活動は、日本ではツーリズムという観光形態ではなく、「自然観察会」や「探鳥会」といったレクリエーションや興味関心のレベルによる形で、自然公園をはじめとした自然系組織(自然観察の森、サンクチュアリ、森林公園、野鳥公園等)を会場として、その多くが実施されてきた背景があり、現在もそれが主流であることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献の収集ならびに現地調査とヒアリング調査は、計画通り実施することができた。国内で野生生物の観察を目的とするツアーを実施している旅行業者へのアンケート調査は、調査対象となる母数が少なく実施できなかったが、現段階では現地調査や国内の鳥類保護団体へのヒアリング調査で、現状把握することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
第一年度の研究成果をふまえ、ワイルドライフ・ツーリズムの構築に必須となる要素を構造化(ワイルドライフ・ツーリズムを学際的に推進していくための研究テーマのリスト化や学問的研究体制の確立のノウハウの解明を含む)する。そして、バードウォッチングの目的地としての沖縄島北部やんばるの潜在的価値の再評価に取り組むとともに、とりわけ近年ヤンバルクイナが多く目撃されるようになった国頭村楚洲区において、現況調査を開始する。そして、同地域を主体としたバードウォッチングツアーモデルの創出に向けて、地域住民との関係づくりと研修会(ワイルドライフ・ツーリズムの理解、ガイドラインの策定やプログラム開発に向けて共通理解を育むための人材育成講座)の定期的開催に取り掛かる。また、研究計画の予定通り、国内外の現地調査及びヒアリング調査を実施する。 第一年度の研究成果は、2012年5月16~18日に開催されるWildlife Tourism Australia’s 3rd National Wildlife Tourism Workshop (於:オーストラリアQLD州Gold Coast、Currumbin Wildlife Sanctuary)において発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、日本において未成熟な分野の調査研究であるため、海外の先進事例の正確な情報や先行研究の収集が不可欠であることから直接的な現地調査が欠かせなく、研究計画の予定通り、第二年度においても研究代表者及び研究協力者の出張のための最低限の経費(交通費、宿泊費等)が必要となる。また、第二年度においては研究成果の検証・発表のための関連学会への出席に伴う経費(交通費、宿泊費等)の使用が計上されている。
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