2011 Fiscal Year Research-status Report
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23614025
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
安島 博幸 立教大学, 観光学部, 教授 (30159199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 和夫 立教大学, 観光学部, 教授 (10157745)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 観光地 / 成長と衰退 / 温泉地 / ライフサイクル / 理論モデル |
Research Abstract |
これまで観光地の誕生から成長・発展、そして衰退にいたるプロセスを説明する理論は、商品ライフサイクルの理論を観光地に適用したR.Butler(1974)による「観光地のライフサイクル理論」により,ライバルとの地域間競争や環境容量による制約によるものと説明されてきた。また,心理学的な面から,Prog(1972)は,観光地成立から時間が経過すると来訪者の質が変化し,数の減少をもたらすことなどと説明している。 本研究では、まず既存の理論である、R.ButlerやProgの理論の盛衰要因の中心と考えられている環境容量や来訪客の質的・量的変化について考察を行った。次に、本研究で仮説としている観光地の価値について理論的に、また現地調査に基づいて考察した。 具体的には、昨年度前半には、本研究の大きな柱となっている「観光地の価値」とは何かについての理論を検討し、また価値はどのような要因によって増減するかに関する理論的な考察を行なって、成長・発展と衰退過程の理論モデルを提示した。。その結果については、2011年12月に開催された日本観光研究学会全国大会論文集において『観光価値の増減要因に関する理論的考察』に成果をまとめて発表している。 理論的な考察を進めるとともに、観光地としての盛衰が顕著に見られる温泉観光地についての現地調査とヒアリングを実施した。現地調査を行ったのは、福岡県・原鶴温泉、熊本県・黒川温泉、杖立温泉、長湯温泉、別府温泉である。資料を収集し、現在の様子を記録するとともに関係者からヒアリングを行った。これらの情報を整理し、今後の研究の方向を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論モデルについては、日本観光研究学会において発表を行い、外部からの課題や改善点についての指摘や示唆を受けているので、さらに改良を進めていきたいと考えている。23年度の研究により、これまでのバトラーのモデルでは説明がつかなかった観光地の発展・衰退に関する現象の説明が可能になったと考えている。 また、観光地の価値の発生プロセスについて、さらに社会的なコンテクストという概念を入れて、価値が誕生するときのメカニズムをより適切に説明できると考えているので、この部分について検討を進めたい。 ヒアリングや現地調査により、温泉地の抱える問題点などを現象として把握することができたが、成長・衰退に関する理論の検証をするところまでは至らなかった。理論モデルの全体的な妥当性については概ね納得のいくものであったが、分析のためのデータとしての整理が十分ではないと考えており、理論モデルにおいて掲げた仮説をどのように実証していくかを今後検討していきたい。 調査の結果、さらに新しい価値増減に関する要因が加えられた。これらの諸要因を取り込んで、モデルを精緻化することが必要であると考えられた。これも成果の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に温泉を中心とする調査対象地の基本的な資料収集および現状把握が行ったので,24年度については追加調査が必要と判断される地域について,継続的に調査を実施する。従って、温泉地についてさらに調査を行うとともに、交通の整備が観光地の価値に与える影響に関する仮説を確認するために、新幹線、高速道路、アクアライン、本四架橋の影響があったと見られる地域について調査を実施する予定である。 これらから、理論仮説として挙げた観光地の盛衰に影響があると考えられる要因について調査データに基づいて検証を行う。この作業により,個々の成長・衰退要因を概ね明らかにできると考えている。 さらにすべての調査や研究結果を踏まえて,観光地の成長・発展・衰退を総合的に説明できるモデルの構築を行うための研究打ち合わせを行う。 最終的には、構築した観光地の成長・発展・衰退モデルが過去の事例を理論的に破綻することなく説明できるかどうかを検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の主な使用目的は、調査研究旅費である。23年度にスケジュール遅れのために使い切れなかった未使用額の約40万円も旅費に充当する予定である。今年度も継続して九州の温泉地や本四架橋の影響を受けた四国の観光地などを調査するため、経費のうち旅費の占める割合が高くなる。また、熱海温泉、鬼怒川温泉、水上温泉やアクアライン関連の調査地点については、日帰りまたは、1泊で複数回の調査を予定している。 (1)調査研究旅費として、(1)遠隔地の調査については、2泊3日の調査を4人×3カ所×50000円/カ所 【小計】600000円 (2)関東周辺の比較的近い調査地については、1泊2日の調査を2人×5回×20000円/カ所 【小計】200000円 (2)物品費については、データ整理用のコンピュータを購入予定である。【小計】90000円 (3)また、今年度は、調査分析を進めるために昨年度に収集したデータも含めて整理などに研究支援者を雇用して実施する予定である。研究支援者雇用費として、8000円×5日×1人 【小計】40000円 (4)資料の複写や会議の際の配付資料の複写費として、10円/枚×5000枚【小計】50000円 (5)通信費として、【小計】20000円 を予定している。
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Research Products
(1 results)