2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23617031
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Research Institution | Nagoya University of Arts and Sciences |
Principal Investigator |
塚原 丘美 名古屋学芸大学, 管理栄養学部, 准教授 (00387911)
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Keywords | 耐糖能異常 / やせ型 / インスリン分泌 / インクレチン分泌 |
Research Abstract |
1、スクリーニング75gOGTT(糖負荷試験) 平成24年5月に20~21歳の女子大学生145名(BMI 20.3±2.6)を対象として75gOGTTを行った。その結果、糖尿病型2名、1時間値が180mg/dL以上の境界型12人、1時間値が180mg/dL未満の境界型21名、正常型110名であった。過去10年行なってきた同様の試験では約40%の者が境界型か糖尿病型であったが、今年度は約25%と例年より少なかった。 2、介入試験 スクリーニング75gOGTTで異常値を示した者のうち介入試験参加への承諾が得られた者は5名(BMI 18.7±1.4)であった。12月から2月の3ヵ月間を介入期間とした。介入の内容は1日に3回、主食(糖質)を含む食事をすることとした。主食の量は体格に応じて、40gあるいは60g/食を指示した。介入期間中は食事の評価を毎食行い、チェックシートに記入させたため、概ね実行されていた。その結果、介入後の体格(体重や体脂肪率)の変化は無かった。介入後の75gOGTTにおいて、30分と60分の血糖値は5名中4名が低下したが有意な差は認められなかった。しかし、120分の血糖値は有意に低下し、さらに全体的な血糖値の値を評価するAUCは有意に低下した。 このうち、介入前の75gOGTTでインスリン初期分泌能(Insulinogenic index)が0.5と少なく、境界型(120分値が161mg/dL)であった被験者は、介入によって、GLP-1の30分値が10.6から18.2pmol/L、60分値が4.0から10.2pmol/Lと増加し、インスリン初期分泌能は0.9と正常範囲内になった。この被験者の血糖値は30分、60分、120分値が低下し、AUCも低下した。前年度の結果と同様に、低値を示した被験者のインスリン分泌機能は日常の規則的な食事によって改善された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画で掲げた被験者目標数に達していない。科研費申請時の計画ではインクレチン(GLP-1)は当大学内の分析器を利用して75gOGTT時に自ら測定する予定をしており、その費用は試薬のみ計上していた。しかし、申請後に日本糖尿病学会より測定方法の基準が定められ、これを満たすために臨床検査センターへ委託することとした。その結果、1検体あたりの費用は高くなり、昨年度末に直接経費使用内訳変更を申請した。平成23年度はほぼ予定通りの人数で研究を行ったために、23年度助成金を超えてしまったため、今年度で調整するために、被験者数を増やせなかった。25年度はほぼ予定通りの被験者数で施行できる。 一方、被験者は主に当大学3年生の学生より抽出する。24年度は、授業や学外実習の日程とOGTT施行日が重なって承諾を得られない者も多く存在した。これらの該当者は25年度の研究に参加依頼を行う。 しかしながら、被験者数は少ないものの得られている結果はほぼ予測どおりであり、このまま被験者数を重ねることができれば一定の見解が得られる可能性が高い。すなわち、やせ型の若年女性に多く認められる耐糖能異常は、インスリン分泌能の低下によるものと考えられ、3ヶ月間の糖質摂取を中心とした食生活の改善によってインクレチン(GLP-1)の分泌能が増し、これに伴ってインスリン分泌能が改善され、その結果、耐糖能異常が改善される。この新しい概念を今後の糖尿病予防に活かしたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度および24年度と同様の糖質負荷の介入試験を行う。24年度は予算内に収めるために被験者数をかなり控えたが、25年度は本研究の最終年度にあたるため、できるだけ多くの被験者に承諾していただけるようにする。 例年どおり、5月に約150名の若年女性を対象にしたスクリーニング75gOGTTを行う。この試験は簡易血糖測定器を用いて行う。その結果、2時間値140 mg/dL以上で境界型あるいは糖尿病型を示した者のうち、特に1時間値が高い者を中心に被験者を募る。これまでと同様に、介入項目は①1日3食(主食を含む食事)摂取すること、②1食の糖質の量を40g以上または60g以上摂取すること(身長が160cm以下の被験者は40g以上、160cm以上の被験者は60g以上を目安に指示する)、とする。24年度はこの介入項目が実行されるように毎日チェックシートを付けてもらったが、25年度はチェックシートに加えて、抜き打ちの食事調査を行なったり、常々食事介入の実行度を伺ったりする予定である。また、被験者数を多くするために、介入時期を、例えば10月~12月の3ヵ月間など、少し早めにすることも検討している。 3年間で得られた結果をすべて統合して分析を行う。スクリーニングOGTTの結果は約450名の若年女性に対する結果が得られるので十分な対象者数と考えられ、介入試験を行う被験者はこれまでと合わせて約30名になることを想定している。この被験者数でGLP-1やインスリンの分泌に明らかな改善が認められれば論文投稿に十分値すると考えている。日本糖尿病学会や日本栄養改善学会の学術総会での発表と論文投稿、あるいはDiabetes Research and Clinical PracticeやJournal of Diabetes Investigationへの論文投稿を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度に使用できる研究費は約1,800,000円であり、臨床検査センターからの看護師派遣料(3名×2回)で90,000円、血液処理試薬に70,000円の支出を予定している。残りの研究費をすべて血液検査料とする。被験者1名につき約105,000円必要なので、15名(約1,575,000円)の被験者を計画できる。しかし、さらに被験者を募ることが可能であれば、当大学の個人研究費で補填してできるだけ多くの被験者を確保する。
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