2012 Fiscal Year Research-status Report
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23618011
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
永松 剛 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70453545)
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Keywords | 幹細胞 / 多能性 / リプログラミング / 分化 / 安全性 |
Research Abstract |
iPS細胞由来の細胞による腫瘍化の問題を解決するために分化抵抗性を示す細胞に着目し、その分子基盤の解明からiPS細胞とES細胞の差異を明らかにすることを目的としている。 iPS細胞とES細胞の最も大きな違いは外来因子を導入したことである。そのためiPS細胞とES細胞の差異を生み出す原因の有力な手掛かりとなることが考えられる。そこで外来因子の不活性化の均一性や再活性化の有無そしてそれらと分化抵抗性との関係を解析しを行っている。iPS細胞誘導の各因子(Klf4, Sox2, Oct3/4, c-Myc)とヒトあるいはラット由来の細胞表面抗原を2A配列でつないだレトロウイルスベクターの作成を作成した。このベクターを用いてiPS細胞の誘導効率と外来因子の量比の問題を検討したところ、Sox2の発現が低いこととOct3/4の高発現が多能性誘導に深くかかわることが明らかとなった。Sox2-high, Oct3/4-lowの細胞集団(低効率)とSox2-low, Oct3/4-highの細胞集団(高効率)を遺伝子導入後2日において分取しマイクロアレイをもちいて遺伝子発現を解析した。両者の比較から細胞外環境に対する反応性の違いが示唆され、ケモカインのCCL2を用いることでiPS細胞の樹立効率を上昇させることを見出した。また、核内因子に着目しWhsc1l1 variant1に3因子によるiPS細胞誘導の際に樹立効率を上昇させる活性があることを見出した。 さらに始原生殖細胞と体細胞リプログラミングの関係に着目し、始原生殖細胞からはリプログラミング因子のいずれの1因子でも多能性が誘導されることを明らかにした。この培養系を用いてマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行い、c-MycとL-Mycの違いを生み出す分子の候補遺伝子を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
導入遺伝子の発現をモニターするTag付きベクターを作成し、iPS細胞誘導効率における4因子の最適比を明らかにした。導入因子の量比がiPS細胞誘導効率を変化させる分子メカニズムについてマイクロアレイによる遺伝子解析を行った。その結果、細胞外環境に対する反応性が異なることが示唆された。特にGPCRのパスウェイが変動していることからGPCRファミリーの一つであるケモカインに着目し、iPS細胞の樹立効果を上げる因子としてCCL2の同定に成功した。さらに転写因子とエピジェネティックモディファイヤーに着目してc-Mycを除く3因子の導入の際にのみではあるが、Whsc1l1 variant1がiPS細胞の樹立効率を上昇させることを明らかにした。このようにTagベクターによる導入因子の可視化に成功したことから、新たな因子の同定にも成功するという成果を上げることができた。そのため達成度としてはおおむね順調に進展していると考えている。一方で、腫瘍化の問題に関しては始原生殖細胞と体細胞リプログラミングの関係についての解析からc-MycとL-Mycの差異を生み出す候補因子の同定に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
一昨年度の成果から外来因子の再活性化と分化抵抗性に関しては当初の予想に反して直接の関係がなさそうであることが明らかになっており、今後は外来因子の再活性化にこだわらずにリプログラミングの結果どのように分化抵抗性細胞が生じるのかを解析していく。未分化性を維持する培養条件と分化誘導条件下それぞれで培養したiPS細胞をNanog-GFPの発現を指標に分取し、遺伝子発現の変化や腫瘍化との関連について解析を行う。これまでに腫瘍化に関してはc-MycとL-Mycの差異がかかわることが報告されている。どちらの因子もiPS細胞の樹立効率を上昇させるもののc-Mycに関しては腫瘍化の可能性も上昇させてしまう。その点L-MycはiPS細胞の樹立効率のみを上昇させるため、c-MycとL-Mycの差異に腫瘍化の制御の仕組みに関わる重要な知見があると考えられている。始原生殖細胞と体細胞リプログラミングの関係についての解析から同定したc-MycとL-Mycの差異を生み出す候補因子に関して、その機能解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
iPS細胞の樹立およびに分化誘導系の培養に培地をはじめとする多種類のサイトカインおよびに低分子化合物を必要とするためその購入費にする。培養した細胞の解析に用いる抗体・試薬およびプラスチック器具等の消耗品も必要である。さらに一部を旅費として情報収集等のための学術集会等参加と成果発表に当てる。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Regulation of glycolysis by Pdk functions as a metabolic checkpoint for cell cycle quiescence in hematopoietic stem cells.2013
Author(s)
Takubo K, Nagamatsu G, Kobayashi CI, Nakamura-Ishizu A, Kobayashi H, Ikeda E, Goda N, Rahimi Y, Johnson RS, Soga T, Hirao A, Suematsu M, Suda T.
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Journal Title
Cell Stem Cell.
Volume: Jan 3;12(1):
Pages: 49-61
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Posttranscriptional regulation of histone lysine methyltransferase GLP in embryonic male mouse germ cells.2013
Author(s)
Deguchi K, Nagamatsu G, Miyachi H, Kato Y, Morita S, Kimura H, Kitano S, Hatada I, Saga Y, Tachibana M, Shinkai Y.
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Journal Title
Biol Reprod.
Volume: Feb 14;88(2)
Pages: 36,1-8
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Induction of pluripotent stem cells from primordial germ cells by single reprogramming factors.2013
Author(s)
Nagamatsu G, Kosaka T, Saito S, Honda H, Takubo K, Kinoshita T, Akiyama H, Sudo T, Horimoto K, Oya M, Suda T.
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Journal Title
Stem Cells
Volume: Mar;31(3)
Pages: 479-87
DOI
Peer Reviewed
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