2011 Fiscal Year Research-status Report
大規模複雑システムのための階層構造創発メカニズムの構築
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23650071
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
栗原 聡 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (30397658)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | twitter / デマの拡散 / SIRモデル / 感染 / 複雑ネットワーク / デマの訂正 / ハブ / スケールフリー |
Research Abstract |
脳や人体・社会システムなどの大規模複雑システムにおいて、脳における神経細胞ネットワークと意識、そして人体における細胞と臓器の関係等は、個々の階層がある要素集合によるネットワークとして構成され、そのネットワークとしての振る舞いが別の階層における要素を生み出すというダイナミクスを持ち、階層が階層を生み出す関係にありながら、個々の階層におけるダイナミクスは階層ごとに独立しており、個々の階層にて流れる時間の粒度も階層ごとに異なる特徴を持つ、「複雑系階層構 造」である。 そして、大規模化・複雑化が加速するインターネットやアンビエントネットワーク等の情報社会インフラにおける新しいシステムを構築するに際し、従来の還元論型の工学的階層構造では大規模複雑システムを構築する手法としては限界がある状況において、これを可能とすることが期待される複雑系階層構造を工学的に利用する手法の確立を目指す。 今年度はセルオートマトンに基づく実験用プロトタイプの実装を計画していたのですが,3・11の大震災があったことから,災害防止・安全安心へのITの寄与が期待される社会情勢を鑑み,24年度に計画していた階層構造創発モデル構築において,今回の震災において良くも悪くも注目されたtwitterにおけるデマや風評の拡散とその防止に着目した.各個人の行動からデマや風評というメタ階層が創発されるしくみの解明が目的である. 今回は,twitterにて拡散するデマ情報の拡散の様子のモデル化と,拡散を収束させるための方策の検討を行った.デマ情報とそのデマの訂正情報を病気とみなし,感染症疾患の伝染モデル(SIR モデル)を拡張してデマ情報・訂正情報の拡散モデルを構築し,デマ訂正情報を効率的に拡散させる方法についての検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3・11大震災を契機として,急遽研究対象をtwitterやデマ拡散防止に変更したものの,このテーマも当初の研究計画に盛り込まれてたものであり,大きな路線変更ではない.加えて,SIRモデルによる再現が可能であることを示すことに成功し,効率的なデマの沈下に関する方策についても提案することができた.成果を研究会にてすでに発表を開始しているが大きく注目されている.
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Strategy for Future Research Activity |
現段階では,また,複数回デマ情報や訂正情報の拡散が起こる場合の,拡散を重ね合わせたモデルを構築する部分が課題として残されている.今年度はより詳細なモデルの構築を行い,一つの研究成果としてまとめ上げる計画である. その後,当初に計画である自律移動ロボットによる複雑階層創発モデル構築に関する研究に具体的に着手し,ロボットがセンサーの出力に応じてモーターを制御する機構の設計において、センサー出力を人における神経(感覚)層、モーター制御を意識層として階層構造を構築する方法の創出に取り組む。 ロボット制御研究において、センサーの出力とモーター制御を機械学習によるマッピングを行うことで、内部モデルを持たせることなく障害物回避などを行う手法等が提案されているが、これはセンサー層に閉じたままである。これに対し、本研究では、センサー層におけるセンサーから出力を伝達する神経細胞に相当するモジュールを追加して、脳神経細胞ネットワークに相当する、センサーからの入力に応じて反応するモジュールネットワークを構築する。そしてこのネットワークの挙動から意識層に相当する階層を創発させるしくみを構築する
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入としては,ロボットとして,スイスK-termにより制作させている Khepera IIIの購入を計画している.また,対外活動として,twitterテーマについての発表を国内外会議にて精力的に行うとともに,ジャーナルへの投稿を目指す.
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Research Products
(2 results)