2012 Fiscal Year Research-status Report
統計数理モデリングに基づく感染症拡大予測と科学的政策決定
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23650143
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井元 清哉 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (10345027)
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Keywords | エージェントシミュレーション / 数理モデル / インフルエンザ / パンデミック |
Research Abstract |
2009年に起こった新型インフルエンザにおいて、感染拡大を把握することの重要性は広く認識されたかと思われる。また、近年、中国において発生している H7N9 インフルエンザの感染についてもヒトーヒト感染がまだ確認されていないとはいえ、それが起こらない保証はなく、事前にパンデミック時の感染拡大について予測し、対策を立てることは必要であろう。本研究では、そのためのインフルエンザパンデミックをシミュレーションできる数理モデルの構築を目標としている。本年度は、昨年度に投稿した大阪、東京を新幹線で結んだマクロシミュレーションモデルの論文について、そのシミュレーションモデルに確率的な要素を組み入れより柔軟に現象を捉えることのできるよう改変したものにし再投稿した。現在査読されているところである。また、マクロシミュレーションモデルは、パンデミック時における具体的な対応策の立案に用いることは困難であることから、エージェントシミュレーションモデルを構築した。具体的には、中央線沿線を想定し、5つの町が一つの鉄道でつながった仮想都市をコンピュータ上に構築し、その中に100万人の人々を年齢、性別をつけ、家庭、会社、学校、などの活動場所、会社員、学生、主婦などの属性、電車、徒歩などの移動手段を定義し、約半年にわたるパンデミックシミュレーションを可能とした。その仮想都市の中に、一定人数の感染者を入れることで仮想的なパンデミックを引き起こすことが可能となり、どのような人々に感染した際に感染拡大が起こるか、また、どのような人々に優先的にワクチンを与えることで感染拡大を防ぐことができるかを定量的に議論することが可能となった。この研究成果は現在論文として投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
100万人以上のエージェントを動かすエージェントシミュレーションモデルの構築は困難を極めたが、現在、数日の時間をかけることで約半年のシミュレーションが可能となった。また、その仮想的なワクチン接種の実験から、どのような人々にワクチンを接種することがパンデミック制圧に有効化という極めて重要な知見を得ることができた。ただ、成果として論文として投稿しているが、まだ出版されていないため「おおむね順調」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
実際の感染者数のデータをシミュレーションモデルに取り込み、より現実に近いモデルを構築することが最終年度である今年度の目標である。そのために必要なデータを収集し、パラメータ学習のできるモデルへと改変する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究成果は順調に論文としてまとめ投稿しているところであるが、大阪、東京を結んだマクロモデルの採択が予定よりも遅れており、その成果報告についての経費を次年度に繰り越している。また、エージェントシミュレーションモデルの研究についても論文化に重点を置き、研究発表などを一部見合わせたため、次年度に合わせて行う計画である。
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