2013 Fiscal Year Annual Research Report
統計数理モデリングに基づく感染症拡大予測と科学的政策決定
Project/Area Number |
23650143
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井元 清哉 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (10345027)
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Keywords | 感染症拡大の数理モデル / マクロシミュレーション / エージェントシミュレーション / ジョイントモデル |
Research Abstract |
インフルエンザなど感染症の拡大する様相をシミュレーションするための数学的なモデルとしては、SEIR モデルと呼ばれるマス・アクションに基づく微分方程式モデルが用いられることが多い。このモデルは、感染していない集団 S、感染し潜伏期間にある集団 E、発症している集団 I、発症から回復し免疫を獲得した集団 R という4つの集団により記述される。これは例えば、日本全体というような大きな規模での感染者数の試算ではある程度の予測能力を有するものであるが、感染症対策を立案する際に個別の対策の有効性を検証できるようなものではない。そこで、本研究課題においては、東京近郊を模倣した 5 地区からなる仮想都市を計算機上に構成し、会社員・学生・在宅者の3カテゴリーの行動パターンに従う120万人の住民を配置し、学校・会社・商店などでの感染伝達をシミュレーションするためのエージェントベースシミュレーションモデルを構築した。これら5地区は人口の多い郊外と会社が集中している都心とからなり、地区間の移動には鉄道を用いるとした。ワクチン接種を実施しない場合の感染割合が30%となるように感染力を設定し、優先接種グループとして会社員、在宅者、ランダムの3通りをシミュレーションした。その結果、会社員に優先接種した場合には、大きな効果が見られた。例えば、流行開始から1ヶ月の間にすべての会社員に配布する場合、非感染者内の感染割合を7%程度に低下させることが示された。一方、ランダム選択や在宅者を対象とした場合には、それぞれ約20%、約30%となり、非接種者への波及効果が小さいことがわかった。本研究課題の成果として、感染症対策のアクションプラン立案に活用可能なエージェントベースシミュレーションモデルの構築に成功した。
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