2011 Fiscal Year Research-status Report
光学的シナプス不活化法による脳内局所神経回路の機能探索
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23650201
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
神谷 温之 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10194979)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 神経科学 / 生理学 / 薬理学 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
脳のニューロンは多くの入力線維を受け、これらのシナプス入力を統合して、出力である活動電位パルス列の発火パターンを規定する。脳の神経回路網において任意の時空間パターンでシナプス機能を制御することができれば、複雑な局所神経回路網による特定のシナプス入力の活動がもつ機能的意義を理解することが可能になる。本研究では、最近開発された光反応性グルタミン酸受容体ブロッカーANQXの光分解を海馬スライス標本に適用し、光(紫外線)照射の範囲を限定することで、海馬神経回路におけるさまざまな入力の興奮性シナプス伝達を選択的に不活化し、局所回路における各シナプス入力の機能的意義を系統的に明らかにしていくことを目指した。計画の初年度にあたる本年度は、ANQXの光分解法が種々のグルタミン作動性シナプスに同様の作用を示すかを検討し、本手法が汎用性を有する入力特異的遮断法に応用できる可能性について検討を行った。海馬神経回路の主要な興奮性シナプスであるCA1野シャーファー側枝シナプスと、CA3野苔状線維シナプスにおいてそれぞれ入力線維の刺激によるシナプス応答(興奮性シナプス後電位:EPSP)を記録した。ANQX投与とシナプス部位への紫外線照射を組み合わせると、両者のシナプスにおいてEPSPがほぼ同程度に持続的に抑制された。ANQXによるシナプス光不活化法は、AMPA型グルタミン酸受容体を介する脳の興奮性シナプス伝達に汎用的に適用できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス脳スライス標本に局所灌流システムを導入し、海馬シナプスを光照射で持続的に抑制する手法を開発し、その汎用性を示した。入力特異的不活化法の開発と評価を目的とする本研究の基幹技術を開発し、実験条件の最適化がはかられたことから、おおむね順調に研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は紫外線照射の領域を光学的に限定することで、海馬CA3野の2つの入力系、すなわち苔状線維シナプスと連合線維シナプスのそれぞれを光不活化し、それぞれの2つの異なるシナプスの機能的役割について検討する。特に連合線維シナプスはCA3野に特徴的な反回性興奮性回路を形成することから、その機能的意義について検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度は新たな実験手法の開発にあたり様々な実験条件について最適の条件を探索することに多くの時間を要したため、予定より少額の研究費の使用に留まった。実験条件の検討が本年度中にほぼ終了したことから、次年度はより多くの実験を行い、動物や試薬類の消耗品費に使用する予定である。また、次年度は研究計画の最終年度であることから、学会発表や論文投稿など成果発表を積極的に行い、そのための経費として使用することを予定している。
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