2011 Fiscal Year Research-status Report
機能コネクトミクス基盤技術としてのトポロジー同定下シナプス伝達解析法の開発
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23650208
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
加藤 総夫 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20169519)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 機能的コネクトーム / 光遺伝学 / 腕傍核 / 扁桃体 / チャネルロドプシン / 脳スライス / シナプス伝達 / 逆行性標識 |
Research Abstract |
本研究の目的は、投射元と投射先を明らかにしたうえで、シナプス伝達特性を解析しうる新しい実験系を確立することである。遠く離れた構造間の神経「接続」は、その軸索によって伝えられる情報の「意味」を決定する。この接続connectionについての情報が得られることがin vivo実験系の長所であり、その優れた点を、細胞周囲環境の操作、細胞に対する介入的操作などの長所を持つin vitro実験系に取り込み、シナプス伝達解析を可能にする実験系を確立することを目指し、平成23年度は下記の基礎実験を行った。(1)ChR2発現ベクターを脳内の特定部位に導入し発現させる系の確立を目指した。脳部位として、侵害受容情報を疼痛関連情動に関与する扁桃体中心核に送る経路の中継核である腕傍核を選んだ。導入系の確立のため、マウス、および、ラットを用いて、脳定位固定下に、左右両側の腕傍核に微量注入用ガイドカニューレを装着固定する系の作成に取り組んだ。腕傍核は、脊髄後角浅層および三叉神経脊髄路核尾側部から侵害受容性情報を受け取るので、注入ベクター溶液にretrograde蛍光トレーサーを含め、1)注入部位の確認、および、2) 注入部位がこれらの部位から順行性投射を受けていることの逆行性標識による確認、を行った。(2)脳スライスにおける効率的な光刺激を行う系の開発を行った。本研究の目的は、ChR2および関連光感受性チャネルを軸索終末に発現するニューロンの軸索終末近傍を、選択的に十分に脱分極することにあり、そのために、十分なチャネルの発現と、十分かつ電気生理学的記録の妨げにならない光照射系の確立が絶対必要である。この装置の選定と業者の試作品の光ファイバーの接続、強度評価などに、本年度はかなりの時間を費やした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、パッチクランプ記録と逆行性蛍光標識の観察下に十分な光照射を可能とする光学系の確立、および、安定したマウス腕傍核へのベクターおよび蛍光色素導入方法の試行錯誤に費やされた。実際に十分な発現量が得られ、軸索終末への光照射によるシナプス誘発が可能という状態に至っておらず、その点において、進捗はやや遅れている。しかも、腕傍核への注入は、特にマウスにおいては、頭がい骨形状、小脳の大きさなどの面から、運動障害などの有害反応も見られ、特に発現を制御するためのloxPシステムなどを使用しない予定であれば、24年度は、まず、ラットを中心に用いて、導入効率の最適化を図る。さらに、電気穿孔法を中心にChR2遺伝子の導入を計画したが、導入の簡便さと確実さから、アデノ随伴ウィルスの使用も24年度には試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)電気穿孔法でCAGプロモーターに乗ったChR2ベクターの発現を計画していたが、24年度は、AAVによる発現を試みる。本研究計画によって重要なことは、1)十分な軸索終末膜での発現量が得られる、2)大規模な設備・技術がなくとも、通常の生理学教室程度の設備でできる技術を確立する、なので、P1クラスでも使用可能なAAVによって、さらに容易かつ高効率のChR2導入を達成する。(2)ChR2よりも、より光感受性が高く、Ca2+透過性が高いために神経軸索終末における発現によって効率的に光活性化が可能と考えられるCatChのベクターを入手し、その導入・発現も試みる。(3)ChR2 発現ベクター導入の2週間前に、脳定位固定下に、CeC ニューロンが投射する無名質(substantia innomimata dorsalis, SId)もしくは中脳水道周囲灰白質(PAG)に、逆行性蛍光トレーサーRetroBeads Red を微量注入する。以下の3部位の急性脳スライスを作成し、それぞれ記録・観察を行う。(1)CeCを含むスライス(EPSC[LPB→:→SId]電気生理記録用)、(2)LPB を含むスライス(LPB におけるvenus発現確認用)、および、(3)SId を含むスライス(SId におけるRetroBeads 注入確認用)。(1)においては、細胞体がRetroBeads の赤色蛍光を示すニューロンからパッチクランプ記録を行い、青色LED照射によって生じるEPSC を記録することによってEPSC[LPB→:→SId]であることを同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、実験に必要となる消耗品(ベクター増殖と管理;蛍光色素;電気生理学用消耗品)および動物代に使用する。初年度に十分な実施が不可能であった光刺激実験のため、光学系のための小額消耗備品類を購入する。
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