2013 Fiscal Year Annual Research Report
機能コネクトミクス基盤技術としてのトポロジー同定下シナプス伝達解析法の開発
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23650208
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
加藤 総夫 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20169519)
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Keywords | 光遺伝学 / チャネルロドプシン / シナプス伝達 / 脳スライス / 神経投射 / アデノ随伴ウィルス / feed-forward inhibition / 機能コネクトミクス |
Research Abstract |
光遺伝学を基盤とした機能コネクトミクスの確立を目的として研究を進めた。驚くべきことに、今から3年前に立案計画したこの技術はもはや、いささかも「萌芽的」でも「挑戦的」でもなくなり、本研究計画が当初目指した通り、電気生理学の重要かつ常套的手法となった。特に、当初の計画であった電気穿孔法ではなく、2年目に変更したアデノ随伴ウィルス(AAV)法によるChR2遺伝子導入は、平成25年にAAVが日本でもクラス1で扱えるように指針が改定されたことに伴い、取り扱いが大いに簡略化され、その後の研究進捗を著しく速めた。その結果、光遺伝学を用いた「遠く離れた脳領域の機能的結合を解明する」ための方法論的基盤が確立された。本研究で明らかにされたことは主に以下の5つである。(1)軸索終末における充分な発現を得るためには、AAV血清型・プロモーターの最適化が極めて重要である。(2)終末への十分な発現には数週間が必要である。ChR2活性化による放出の確率は、電気刺激によるそれと大きく異なる(高放出確率)ため、シナプス前機構の変化によるシナプス可塑性の解析の結果の解釈は慎重にすべき。(3)単シナプス性の投射の証明には、TTXによるシナプス後電流消失に加え、さらに4-APを加えて終末脱分極を生じさせた際に生じる非同期的放出の誘導も必要である。(4)局所回路近傍に刺激電極を置く電気刺激法と異なり、機能コネクトミクス法による光刺激は、投射線維刺激によって極めて大きなfeed-forward inhibitionが生じる。この発見は、単純な単シナプス性興奮性伝達機構の分析に基づいて構築されてきた現在までの神経生理学的結果の解釈に大幅な再検討を要求するものである。以上、本研究によって、「機能コネクトミクス法」が確立するとともに、この手法によって得られた結果の解釈において注意すべきポイントが明らかとなった。
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Research Products
(5 results)