2011 Fiscal Year Research-status Report
ゲノムDNA化学修飾のニューロン発達における機能解明
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23650215
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
波平 昌一 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (60379534)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ニューロン / 発達 / DNAメチル化 / エピジェネティクス / DNAヒドロキシメチル化 |
Research Abstract |
精神疾患発症やストレス応答脆弱性に、神経細胞(ニューロン)におけるゲノムDNAメチル化の関与が指摘され、さらにニューロンにおいて新たにヒドロキシメチル化というゲノム修飾が発見されるなど、脳・神経系におけるDNA化学修飾機構についての研究は、近年世界的に注目を集めている。そこで、本研究では、ニューロンの発達におけるDNA化学修飾の意義と、その酵素群の機能解析を行うことを目的とする。 本年度はまず、ニューロン発達におけるDNA化学修飾酵素の役割を解析した。shRNAの発現によるDNAメチル化酵素Dnmt1のノックダウン(KD)を誘導し、ニューロンの形態的変化の有無を観察した。その結果、DNMT1KDニューロンでは、コントロールと比較すると、軸索がより伸長する傾向にあることがわかった。一方で、DNMT1の過剰発現したニューロンにおいては、軸索伸長が抑えられる傾向にあった。また、メチル化活性を持たない変異型DNMT1を過剰発現させたニューロンにおいても、同様の軸索伸長の抑制効果が観られた。これらにより、DNMT1はメチル化活性非依存的に、ニューロン軸索伸長を制御する機能を持つ可能性が示唆された。次に、DNMT1KDニューロンから培養上清を回収し、野生型ニューロンに添加する実験をおこなった。その結果、DNMT1欠損ニューロン由来の培養上清を用いた培養においては、軸索伸長がより促進されたことから、DNMT1KDによる軸索伸長の促進は、培養液中に産生する細胞外因子によるものであることを示唆した。また、ニューロンの軸索伸長に関わるTrk受容体のTrkBとTrkCの活性化がDNMT1KDニューロンにおいて観察された。これらの結果は、DNMT1がそれらの受容体の活性化調節を介して軸索伸長を制御することを示唆している。現在、DNMT1の標的領域等の同定と、相互作用因子の探索を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように、本年度は、DNAメチル化酵素の一つDNMT1がTrkレセプターの活性化を介してニューロンの軸索伸長を制御していることを突き止めた。このことは、DNA化学修飾酵素がニューロンの発達に寄与していることを示しており、本研究の目的の一つである、ニューロン発達におけるDNA化学修飾酵素の機能解析を明らかにする上で基盤となる成果である。また、発達中のニューロンのTrkレセプター活性化経路がDNMT1よって制御さているという結果は、次年度に予定されているDNA化学修飾酵素の標的領域決定や相互作用因子の探索を実行する上でも重要な成果である。従って、本研究課題は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、当初の研究計画通り進める予定である。具体的には以下の通りである。 1)DNMT1KDニューロンからRNAを回収し、マイクロアレイによって発現遺伝子を同定する。同時にDNAも回収し、MeDIP法を行い、発現が変化した遺伝子の転写調節領域のメチル化状態を調べる。さらに、DNMT1抗体を用いてクロマチン免疫沈降を行い、ハイスループットシークエンサーを使用しニューロンにおけるDNMT1標的領域の同定を行う。さらに、DNMT1の相互作用因子をタンパク質質量分析装置(LC-MS/MS)を用いて解析する。これらにより、ニューロン発達におけるDNMT1の機能を明らかにする。 2)ニューロンにおいて特異的にDNMT1が欠損したSynapsinCre-Dnmt1floxマウスを用いて、恐怖条件付け試験により記憶能力の発達におけるDNMT1の役割を調べる。さらにオープンフィールド試験、明暗往来試験等を行うことで、情動行動に関わる脳領域の発達における役割も解析する。これらの実験によりマウスの行動に変化が見られた場合、海馬領域などを短期スライス培養し、電気生理学的手法により長期増強(LTP)や長期抑制(LTD)の変化を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も概ね研究費は、培養器具やプラスチック器具などの消耗品費、実験試薬やキット購入費、マウス購入費、遺伝子改変マウスの維持費として使用予定である。また、ハイスループットシークエンサー使用のための試薬費としても使用する。さらに、日本分子生物学会に参加するための交通費などの旅費として使用する予定である。
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[Presentation] DNMT1 regulates neuronal differentiation of neural precursor cell in late-gestational forebrain.2012
Author(s)
Noguchi, H., Namihira, M., Tanaka, T., Sanosaka, T., Nakashima, K.
Organizer
40th KEYSTONE SYMPOSIA
Place of Presentation
Keystone, Colorado, USA
Year and Date
January 17, 2012
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