2011 Fiscal Year Research-status Report
二者の機能的MRI―脳波―視線同時計測による社会的相互作用のシステムダイナミクス
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23650224
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
田邊 宏樹 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 助教 (20414021)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 認知科学 / 神経科学 / 脳機能イメージング / コミュニケーション / 社会脳 |
Research Abstract |
現実の対面コミュニケーション場面では、視線のやりとりはダイナミックで相互作用的であり、今までの視線認識の研究ではとらえきれない本質が残されていると考えられる。しかしながらリアルなコミュニケーション場面での視線や脳活動を計測する研究は、装置上の制約や困難性・解析手法の複雑さなどからほとんどなされていない。本研究では、二者間の視線・脳波(EEG)および機能的磁気共鳴画像(fMRI)すべてを二者同時に同時計測することにより、より現実場面に近い社会的相互作用時の時系列データを取得し、視線を介した対人コミュニケーションを1つの社会的相互作用のダイナミカルシステムとして取り扱う系の確立を目指している。本年度は、同時計測によるそれぞれの機器のデータ干渉について洗い出しを行い、各機器で取得できるデータに混入するノイズの低減を目指した。まず、MRIと視線の二個体同時計測とEEG-MRI同時計測を行い信号二度の程度ノイズが混入するか、その原因に関して調査を行った。MRIについてはノイズ源を特定し対処したことで、取得画像へのノイズを大幅に低減させることが出来た。EEGに関しては、EEG-fMRIの同時計測によるEEG信号へのノイズ低減に関する実験、眼球運動(視線の動き)がどの程度EEG信号、特に前頭部への生理的ノイズとして混入するかの実験を行い、現在解析中である。 上記ノイズ調査と平行し、今年度はfMRI-視線計測の二個体同時計測実験を行い、リアルタイムでお互いの顔を見ているときの脳活動や注意の共有課題を行っている際の神経基盤の特定を行った。これらの結果に関しては、現在論文化を進めており、結果の一部に関しては学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずfMRI・EEG・視線計測それぞれの系を立ち上げ、それぞれが単独で計測出来ることを確認した。さらにこれを二個体の同時計測が出来るようにセッティングしシステムの構築を進めた。その結果、同時スキャンできるようにMRI機器同士を繋いだだけでも二個体同時計測時にはそれぞれ単独で動かしていたときには見られなかった画像へのノイズが見られることが判明した。さらに視線計測用機器を立ち上げると、それに伴いノイズが倍増していくことが確認された。主なノイズ源を探るため、主に電気系・ケーブル系のチェックを行い、MRI室内に持ち込んだ顔カメラ周辺の機器がノイズ発生源になっていること、また耳の保護ならびに音声伝達のためのヘッドフォンケーブルがそのノイズを収集するアンテナになってしまっていることを明らかにした。そのためカメラ周辺の新たなノイズ対策、ヘッドフォンケーブルのシールドを行ったところ、大幅なノイズの減少をみた。また、EEG-fMRI同時計測実験において、EEG側にMRI装置由来のノイズの混入を確認した。ノイズ源として液体ヘリウムを循環させるポンプ由来のものがあるが、今回使用するMRI装置は従来機と異なりヘリウムポンプを停止させるという手段が使えないことが判明した。そこで加速度センサを用いてこのポンプによる振動を計測し、EEG信号に混入するノイズを低減させる手法の開発に取り組んでいる。 ノイズ対策と平行して、今年度はfMRI-視線計測の二個体同時計測と一個体のEEG-fMRI同時計測実験を行い、お互いの顔を見ているときの脳活動や注意の共有課題を行っている際の脳活動および視線データの取得に成功した。この研究結果については現在論文をまとめているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
同時計測によるノイズの混入に対してある程度目処が立ったので、さらなるノイズ対策と平行して同時計測実験を行っていく。EEG信号へのMRI装置のヘリウムポンプからの振動ノイズに関しては、ポンプを停められない以上ポストプロセッシングでの対処を考えざるを得ない。予備実験では加速度センサを用いたノイズ除去である程度の除去が出来ることが分かったが、これは被験者の状態などによっても変化し、場合によっては上手く除去できない。来年度はさらなる精度を目指し改善を行う。一方MRI画像への電気的ノイズ混入に関しては、ノイズ源およびノイズが混入する仕組みが解明され、ノイズ除去の目処がついた。アンテナとなるヘッドフォンケーブルは線をシールドすることによりかなりのノイズを低減させることは出来たが、完全になくすことは出来ていない。これはヘッドフォンケーブルが金属線ケーブルであることが理由である。ヘッドフォンを空気伝導型に変更することにより、原理的にはヘッドフォン由来の画像ノイズを完全に消すことが出来るので、その方法を試す。 同時計測実験においては、今年度に得られた結果を基にして、視線―EEG―fMRIの二台同時計測システムを用い、実際に注意の共有課題等視線を媒介とした対人コミュニケーション課題をおこなっている際の、視線・EEG・fMRIデータを取得する。解析に関しても、共同研究により二個体同時計測で得られたデータを1つのシステムとして解析する方法を現在模索している。来年度は実験的にこの解析法を適用し、視線を介した対人コミュニケーションを1つの社会的相互作用のダイナミカルシステムとして取り扱う系の確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を遂行するのに必要な大型実験器、特に脳波計測にかかわるものは今年度に購入したため、来年度は実験遂行上必要となる脳波計測に関わる消耗品を購入予定である。また、来年度は最終年度でもあるため、国内外での研究の発表と論文化のために研究費を使用する予定である。具体的には学会発表に関わる出張旅費・学会参加費と論文化の際の英文校正費である。
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Research Products
(5 results)