2011 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍内プロテアーゼ活性をイメージングするオーバーハウザーMRI造影剤の開発
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23650266
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新留 琢郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20264210)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | オーバーハウザー効果MRI / ESR / デンドリマー / ニトロキシラジカル / プロテアーゼ / 腫瘍 |
Research Abstract |
オーバーハウザー効果MRI(OMRI)は電子スピンからプロトンへのエネルギー遷移により核磁気共鳴信号を数十~数百倍にも増強する新しい画像診断法である。本研究では腫瘍に集積する性質を持つポリマーにOMRIの造影剤となるニトロキシラジカル基を修飾し、腫瘍内のプロテアーゼ活性をリアルタイムにイメージングするシステムを構築する。この技術は、腫瘍内の1種類のプロテアーゼの活性量を知るだけではなく、複数のプロテアーゼ活性を同時に検出することも可能にする。さらに、従来の蛍光イメージングとは異なり、MRIを基盤とするこのイメージング技術は体内深部の診断も可能にし、次世代の機能イメージング技術と発展すると期待される。 23年度は枝分かれ状高分子(デンドリマー)の末端にOMRIの造影剤となるニトロキシラジカル(PROXYL)基をペプチド鎖を介して修飾した。このペプチドは腫瘍選択的に発現しているウロキナーゼタイププラスミノーゲンアクチベーター(uPAプロテアーゼ)の基質配列をもつ。これにモデルプロテアーゼとしてトリプシンを作用させると、PROXYL基がデンドリマーから遊離し、運動性が向上し、ESRスペクトルの顕著な変化が観察された。しかし、uPAプロテアーゼを作用させた場合、ESRスペクトルは変化せず、uPAプロテアーゼの活性不足や基質配列の問題等が考えられた。ESRスペクトルがプロテアーゼの作用により大きく変化したという事実は、この現象がOMRI造影に反映し、腫瘍部位でシグナルが現れることを示しており、本研究課題の第一歩を踏み出すことができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロテアーゼの作用によってESRシグナルが大きく変化するという原理的な部分は23年度に確認でき、それをどう改善すれば、当初の計画を達成できるかについて、示すことができたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の結果より、目的を達成するための問題点を明確にすることができた。これを分子設計に反映させ、目的プロテアーゼであるウロキナーゼタイププラスミノーゲンアクチベーター(uPAプロテアーゼ)に応答して明瞭なシグナルを与える分子の設計を引き続き行う。また、In vivoにおいてこのシステムが機能するかを評価する。uPAプロテアーゼを発現している腫瘍細胞をマウスに移植し、担がんマウスを作製する。それに対して本ペプチドを介してニトロキシラジカル基を修飾したデンドリマー分子を投与し、ESR共鳴ラジオ波有り無しにおけるMRI画像を取得し、オーバーハウザーMRIを取得する。また、コントロール配列をもつペプチドと比較することによって、腫瘍内プロテアーゼに存在するプロテアーゼに応答していることも確認する。その他にも14Nと15Nをもつニトロキシラジカルを組み合わせた2種類のプロテアーゼ活性の同時イメージングや、細胞内に積極的に取り込ませるような表面修飾をデンドリマー分子に施し、細胞内プロテアーゼのイメージングについても検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は前述したように、オーバーハウザー効果MRIの造影剤設計と合成が中心となる。したがって、合成用試薬や分析用試薬の消耗品が必要となる。動物実験においては、使用する実験動物(マウス)に加え、移植する腫瘍細胞の培養に培地やそれを取り扱うプラスチック器具類が必要で、これら消耗品を購入する。 また、この研究を遂行する上で、MRIといった物理的計測技術を専門とする研究者との研究打合せに必要な旅費が必要となる。また、得られた成果を報告し、他研究者との情報交換を行うための旅費も必要である。同時に、成果報告の際の投稿料等のその他費用が必要である。 全体の予算のうち、約6割を前述の消耗品、1割を旅費、3割をその他費用、間接経費に充てる計画である。
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Research Products
(13 results)