Research Abstract |
糖尿病腎症の発症には腎糸球体上皮細胞 (ポドサイト) 障害が関与しており, これは高血糖誘導性のアポトーシスと細胞骨格の破綻により引き起こされると考えられている. そこで, マウスポドサイト細胞株 (MPC5) を用いて, 高血糖誘導性のポドサイト障害に対する MES + HS の効果について検討を行った. MPC5 を高グルコース (25 mM) 条件下で培養したところ, caspase-3 活性化および p38 MAPK のリン酸化を伴うアポトーシス (TUNEL positive) の増加と線維芽細胞様形態に特徴付けられる細胞骨格の変化が確認された. 一方で, MES + HS 群では高グルコース誘導性のアポトーシスの抑制, および細胞骨格強化が観察され, ポドサイト保護効果を及ぼす Akt のリン酸化が増強されることも認められた. これらの結果から, MES + HS は, アポトーシスや細胞骨格の破綻を引き金としたポドサイト障害に対する保護効果を有し, その効果は一部 Akt を介している可能性が示された. 糖尿病腎症モデルマウスとして, db/db マウスおよび KK-Ay マウスを採用して, 腎病態の進行に対する MES + HS の効果について検討を行った. まず, db/db マウスに 6 週齢から週に2回の頻度で MES + HS を行った. その結果, 処置開始から 12-14 週目で腎病態の指標であるアルブミン尿・血清尿素窒素・血清クレアチニンが有意に減少しており, さらに処置開始から 15 週目の腎臓においては腎障害マーカー (Lipocalin-2, Lysozyme) や炎症性サイトカイン (IL-6, KC (mouse IL-8), IL-1β, TNF-α), 線維化マーカー (TGF-β) の mRNA 発現に抑制傾向が見られた.
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