2011 Fiscal Year Research-status Report
細胞形態変化をインジケータとする超効率的培地評価法の確立と革新的培地開発
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23650286
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 竜司 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50377884)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 培地開発 / 細胞形態情報解析 / 形態分類 / パターニング / クラスタリング / 多変量解析 / 培地最適化 / 再生医療 |
Research Abstract |
平成23年度のの研究では、次の3項目を研究目的としていた。(1) 解析データの準備:本目的に対しては、ヒトMSC3ロットを10継代培養(約半年間)し、全サンプルを3つの分化傾向へと分化させるという長期的培養実験をミス無く行い、これにかんして約8000枚の細胞位相差画像を取得し、データベースとした。また、さらには培地成分から血清成分を抜いたもの、脂質成分を変化させたものなどのカスタム培地を準備し、これにかんしても1ロットではあるがMSCの培養画像を数百枚取得しデータベース化した。(2)細胞パターン分類アルゴリズムの開発: C言語およびR言語を用いて、上記データに関してK-meansクラスタリング、CARTの2種類の分類を比較検討し、両方を用いて解析できるアルゴリズムをプログラム化した。さらには多次元情報解析法としてのAutoSOME解析法はWeb上からソースを入手し、これらの手法の比較検討を行った。(3)標準未分化形態ルールの数値化: 結果、上記開発手法の比較検討より、MSCの分化程度の変化は約10個の形態分類模範パターン整理できることがわかった。また、MSCの形の違いを細胞比率でプロット化することによって、低血清状況であっても品質の良いMSC培養が可能となる条件を絞り混むことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、細胞の形をインジケータとして細胞品質が感覚よりも正確かつ詳細に分類できること、また非常にわずかな細胞成分変化がこれらのインジケータの数字によって分類・評価できることが基礎的条件で明確となりつつあるため、研究としての基礎技術が確立されつつあると考えられ、研究はおおむね順調に進んでいると言える。しかし、まだ実証例が足りないため、今後は構築した解析システムをさらに別のロットの幹細胞等や培地条件へと適応し、これらの実用性を検証するものである。H23年度は特に、解析基礎技術の構築、アルゴリズムの構築に注力したため、大元の研究計画であった経費は、約半分程度の利用(特に基礎実験整備)に留まったが、解析基盤技術が明確となったことで研究達成度としては順調であると結論付けた。また、初年度の経費を軽減できた理由には本解析基礎技術の提案を受けて、培地メーカーとの交渉で無償にていくつかの培地成分を提供していただいたことにも起因しており、社会的なニーズを満たすものとしても研究の意義を感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で明確化したことは、細胞の形態情報をインジケータとして用いるためには細胞数のデータ数が充分なくてはならないこと、また画像取得技術および画質が非常に質の高いものでなくてはならないことがわかった。現在、大量画像を安定して取得できるための細胞培養法+細胞画像取得スキームの構築を行っているが、このような周囲技術との複合的な向上が、最終的な解析精度・培地設計の意義につながることが明確となりつつある。このため、今後も画像精度を向上させるための実験技術の向上とサンプル数の向上を目指し、解析法の実用性の検証と汎用性の検証に尽力する。特に、H23年度解析の結果から、ヒト細胞の形態情報は非常に多様であるため、解析サンプルにバリエーションが無いと各種解析モデルが過学習(汎用性が無い状態)に陥ってしまうことも明らかとなったことから、手法の汎用性検証としてはロット数の増加と再現実験がH24年度は重要となる。何が細胞画像データにとって充分なバリエーションとして機能し、細胞培地の設計に有効かはまだ未知であり、培地成分の実験設定を行う際、今後はより大きなバリエーションを作れるような実験設計が必要となりH23年度繰り越した研究費を有効活用し、より他種類の細胞や培地成分の検証を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記課題克服のため、次年度の研究の多くは消耗品費、特に細胞のバリエーションの変化を持たせる実験設計(細胞培養関連試薬、細胞)に利用する予定である。これは具体的には細胞品種の購入数を増やすこと、細胞ロット数の購入数を増やすことに費やす予定である。また同時に、解析のためのパソコン台数とスペックに限界が生じてきたため、2台ほど良いスペックのパソコンの導入も検討中である。また、解析ソフトとしての統計解析ソフトが非常に有効であることがわかったため、並列に様々な解析を進めるためSPSSの最新バージョンの購入も時期を見て検討する。また、上記よりいくつかの実験データがよい形でまとまりつつあるため、この論文発表・学会発表等の成果発表に利用する予定である。
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