2011 Fiscal Year Research-status Report
運動イメージによる運動機能改善効果―大脳皮質脳活動バイオフィードバックの応用
Project/Area Number |
23650325
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松川 寛二 広島大学, 保健学研究科, 教授 (90165788)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮口 英樹 広島大学, 保健学研究科, 教授 (00290552)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 運動イメージ / 大脳皮質脳活動 / バイオフィードバック / 予測制御 / リハビリテーション |
Research Abstract |
能動的な立位動作や歩行動作は日常所作の基本をなし,それらの遂行状態は Quality of Lifeに直結する。Parkinson病,脊髄小脳路変性症,脳血管障害などによる運動失調の進行と共に,これらの動作は困難となる。しかし運動失調者が前以て身体空間や所為動作に関する運動イメージを獲得すると,一時的に運動失調が軽減するという臨床所見が報告されている。そこで,運動イメージを用いたより効率的なリハビリテーション実践の確立を目標として,平成23年度において上肢運動機能検査に対応した動作分析・循環応答の新しい評価システムの開発ならびに運動遂行中や運動イメージ中にみられる大脳皮質活動の連続計測システムの開発を目指した。 その結果,上肢随意運動としてエルゴメーターを用いた上肢回転運動解析システムを作成した。このシステムは運動中の回転角度変化や発揮された筋トルク・筋電図を連続的に記録できた。健常者を用いて,このシステムが運動の適切な開始および終了さらに運動量の大きさやその時間経過を精密に計測できることを確認した。次に,大脳皮質活動のモニターとして,前額部用2チャンネル型近赤外分光装置(NIRS)ならびに全頭型52チャンネルNIRSを用いた計測システムを開発した。NIRSにより大脳皮質前頭葉および大脳皮質全体にわたる局所酸素化ヘモグロビン動態(Oxy-Hb)を計測した。Oxy-Hbは局所の脳組織血流量を反映し,それは間接的に脳活動量と対応する。その結果,大脳皮質前頭葉の脳活動が上肢随意運動の開始に約10秒先行して増加することを明かにした。また,上肢運動イメージ中にも前頭葉脳活動が増加した。対照的に,運動皮質活動は随意運動に増加したが,運動に先行した活動を示さなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究目的である上肢運動機能検査に対応した動作分析・循環応答の新しい評価システムおよび運動遂行中や運動イメージ中にみられる大脳皮質活動の連続計測システムを開発できたので,当初の研究計画はおおむね順調に進捗している。この運動解析システムを用いて,健常者の上肢回転運動をすでに解析し,システムの有効性を確認した。また,近赤外分光装置(NIRS)を使った大脳皮質脳活動の連続計測システムを用いて,上肢運動中ならびに運動イメージ中にも大脳皮質脳活動,特に前頭葉の脳活動が増加することを明らかにした。以上のように,平成24年度で研究予定であるParkinson病,脊髄小脳路変性症,脳血管障害などによる運動失調者の上肢運動の解析と運動イメージの臨床応用に関する健常対照群データを得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度において上肢運動機能検査に対応した動作分析・循環応答の新しい評価システムおよび運動遂行中や運動イメージ中にみられる大脳皮質活動の連続計測システムを開発し健常対照群のデータを得たが,Parkinson病,脊髄小脳路変性症,脳血管障害などに伴う運動失調者を用いた研究は残されている。この研究を平成24年度に実施する予定である。また能動的立位動作を用いた新しい運動評価システムの開発も残された課題である。特に立位動作に伴う大脳皮質活動の計測システムへのノイズ対策を図らねばならない。 平成24年度では,上記の課題を研究すると共に,上肢動作に対する運動イメージが運度失調が軽減するか否か,また軽減するとすれば大脳皮質脳活動がどのように関与するかについて明らかにしたい。この研究成果は運動イメージを用いたより効率的なリハビリテーション実践の基礎的データに繋がると期待できる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当研究代表者(松川寛二)は平成23年度の研究費を計画通り執行したけれども,研究分担者(宮口英樹)は当該研究費の一部(325,200円)を次年度に繰り越した。その理由は,平成23年度には,主に研究解析システムの開発とそれらのシステムを用いて健常対照群に関する研究を実施したけれども,Parkinson病者,脊髄小脳路変性症者,脳血管障害者などを用いた臨床応用は残されておりこれらは平成24年度に行う予定であるためである。宮口研究分担者は,この臨床応用部分を担当しているので,上記のような経過で研究費を繰り越した。平成24年度において,宮口研究分担者は,繰り越し額と平成24年度分担研究費を合わせて,消耗物品費・謝金・旅費などに執行して臨床研究を進捗させる予定である。
|
Research Products
(7 results)