2011 Fiscal Year Research-status Report
体育学分野で求められるグローバル人材と育成プログラム
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23650371
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
三木 ひろみ 筑波大学, 体育系, 准教授 (60292538)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(米国、英国、アジア等) / 国際情報交流(米国、英国、アジア等) / グローバル人材 / 人材育成プログラム / 恊働教育プログラム / サマースクール / ショートタームプログラム |
Research Abstract |
グローバル人材育成のための試策プログラムとして前年度に行ったサマースクールTsukuba Summer Instituteを改善し、第2回目を実施した。前年度は海外からの学生参加者が少なく、国際的な研究者や実践家の講義を聞くことが中心となり、英語によるコミュニケーションは日常的な会話が中心となった。英語力と積極性の不足、参加者同士が自発的にコミュニケーションを始める時期が遅かったことが課題として挙げられた。平成23年度は、英語圏3、その他のヨーロッパ2、アジア4、南米1カ国から39名の学生と9名の研究者が参加し、持続可能な開発をテーマとする体育・スポーツ科学の講義と、グループワークを中心とした研究方法論の演習を実施した。ソーシャルアクティビティやアイスブレーキングの活動を増やし、国籍の異なる学生同士のグループに教員のメンターを付けた。プログラム終了後に全参加者に学習成果に関するレポートを提出させ、海外の教員による評価と合わせて本プログラムの効果を検討した結果、効果が最も大きかった参加者は英語圏からの参加者であることが分かった。英語圏からの参加者は、英語力が不足している非英語圏の学生が体育・スポーツ科学の専門的知識を十分備えており思考力も高いことに気づき、海外に目を向けて様々な国の人たちと関わる必要があると考えるようになっていた。国際的な指導経験のある研究者も予想しなかった結果であり、日本での国際的教育プログラムの価値を認識させることができた。日本人学生は、英語力やコミュニケーション不足を感じていたが、同じアジア圏の学生の積極性や自分の能力の範囲内で活動に関わる自然体の取り組みから学ぶことが多かった。新たな課題として、英語によるグループワークや議論ができるようなプレプログラム、講義や議論を録画してプログラム終了後に見直す復習プログラムの必要性が課題であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グローバル人材育成に対する海外の捉え方や人材育成プログラムを調査分析した上で人材育成プログラムを考案し、その効果を検証して課題を明らかにし提案する予定であったが、交流を進めている米国、イギリス、オーストラリアの研究者の協力を得ることができ、恊働教育プログラムの開発を先に進めた。加えて台湾、ブラジル、インドの大学の協力を得て、多国籍の学生によるグループワークを中心とするプログラムを実施し効果を検討することができた。日本人学生に対する効果だけでなく、アジア圏や英語圏の学生にも効果があることが分かり、試策したグローバル人材プログラムの効果は予想以上であった。グローバル人材育成プログラムを試作し、PDCAサイクルでより良いプログラムの開発に取り組むことができていること、本プログラムの企画に関わる海外の大学や学生を派遣する大学の数や地域が拡大していること、本プログラムがきっかけで海外留学や海外インターンシップに行く日本人学生や短期留学・調査研究のために来日する海外の学生が出現していること、メンター教員や海外講師に対する旅費負担など海外の大学も本プログラムを支援することを検討していること、海外の大学でも同様のサマープログラムを実施することを検討していること等、様々な効果や波及効果が現れ、本プログラムの開発・実施については予想以上の効果を挙げることができている。一方で、計画が前後してしまい、当初行う予定であった海外のグローバル人材に対する考え方や海外のプログラムの調査検討、評価方法の検討には着手できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、2つの方向で研究を進めて行く。1つはこれまでも進めてきたグローバル人材育成プログラムのさらなる開発である。現在は、研究費の補助を受けて海外の研究者を招聘することによって本プログラムを実施しているが、研究の成果としてグローバル人材育成プログラムを提案するためには、グローバル人材育成の効果を挙げることができる持続可能なプログラムを開発する必要がある。そのため、ショートタームプログラム、恊働教育プログラム、ジョイントディグリープログラム等、海外の大学と協力して互いの学生をグローバル人材として育成していく方策を検討していく。また、体育・スポーツ科学分野の日本人学生の英語力や英語によるコミュニケーションを高めるだけでなく、海外特にアジアで優秀な人材として活躍することを念頭においてプログラムを再度検討する。もう1つの方向は、海外のグローバル人材育成プログラムの調査研究と、プログラムの評価方法を検討することである。現在、プログラムの開発・実施に力点を置いており、レポートやインタビューを行い、評価の観点や尺度、客観的な評価方法を確立するための予備的な評価を行っているため、これまでのレポートやインタビューの結果を基に、重要な評価の観点を整理し、客観的な評価尺度や評価方法を検討する。評価の観点・尺度・評価方法を明らかにすることができれば、開発・改善したグローバル人材育成プログラムを現時点よりも客観的に評価することができる。加えて、グローバル人材育成プログラム開発・実施に関わることによって、グローバルな教員としての大学教員の資質を高めることができるのかについても検討していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
グローバル人材育成プログラムとして改善したTsukuba Summer Instituteを実施する。課題として挙った、英語によるグループワークや議論ができるようなプレプログラムと、講義や議論を録画してプログラム終了後に見直す復習プログラムを、国内の体育系単科大学と恊働して開発し、Tsukuba Summer Instituteに対する効果を検討する。平成23年度に収集したレポートやインタビューによる自由記述の評価を基にプログラム評価票を作成し、プログラムの効果を検証する。学生・講師の派遣やプログラムの企画に関わっている海外の大学を対象に調査し、本プログラムの効果と各大学へのメリット、恊働教育プログラムとしての持続的実施の可能性とその方策を検討する。本プログラムに参画した日本人教員にインタビュー調査を行い、FDプログラムとしての本プログラムの効果を検討する。本プログラムと対応する形でオーストラリアのクイーンズランド大学で平成23年度中のUQ Summer Instituteの企画・運営・学生派遣に関わり、日本と海外の両方でジョイントして行うグローバル人材育成プログラムについて検討する。
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