2011 Fiscal Year Research-status Report
食事組成の科学的根拠を提示する栄養素に対するトランスセプターの同定
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23650480
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
宮本 賢一 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (70174208)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | リンセンサー / 骨 / ミネラル / 食事 |
Research Abstract |
トランスポーター機能と栄養素レセプターの機能を併せ持つトランセプターの発見から、これらの分子ファミリーは栄養素吸収率と体内代謝をモニターできる重要な因子と想定されている。よって、ヒトにおける栄養素トランセプターの同定は、食事組成を考える上で非常に重要なテーマである。本研究では、食事に含まれるカルシウム/リン比をモニターできる、ミネラルトランセプター (XRP1 あるいは SLC34A3)の生理機能を明らかにし、成長や骨代謝に必要なカルシウム/リン比を算出する科学的な分子基盤を提示する事を目標とする。本研究では、まず細胞や組織レベルにおける XRP1の機能解析を行なった。XPR1の全組織分布を調べた結果、骨、とくに破骨細胞での発現を確認した。破骨細胞に発現している XPR1の役割を解明する為に、 RAW 264.7細胞や培養破骨細胞を用いて XPR1のトランセプターとしての機能を調べた。 RANKLで刺激した RAW細胞を詳細に検討した結果、XPR1は、未刺激条件では核内における局在が、 RANKL刺激により多核の破骨細胞に分化すると細胞膜に移動することが明らかになった。また、 XRP1 siRNAを用いた研究から、 XPR1の発現量の抑制は、 RAW細胞に置けるRANKL刺激後の分化能を有意に抑制した。また、処理した RAW細胞では、カルシウム存在下におけるリン輸送能が有意に低下していた。さらに細胞外リンによる ERKのリン酸化の抑制を観察された。これらの結果より、 XRP1は細胞レベルにおいては、カルシウム/リン比の違いにより細胞内シグナル伝達に違いが確認された。今後、トランセプターの候補遺伝子 XRP1のノックアウトマウス (KO)の作製を行い、個体レベルでの XPR1の役割について検討を加える予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、初年度、トランセプターの候補遺伝子 XRP1のノックアウトマウス (KO)の作製およびその、表現型解析を予定していた。しかしながら、 XRP1-KOマウスの作製が難航した。その理由は、 XRP1のスプライスバリアントの存在し、当初、予定していた XRP1-KOマウス ES細胞では、 XRP蛋白の発現が確認された。その為に、再度、 XRP1-KOマウスを作製する必要が生じた。一方で、細胞や組織レベルにおける XRP1の機能解析では、 XPR1が破骨細胞に発現し、 RAW 264.7細胞や培養破骨細胞を用いて XPR1の機能を明らかにした。 RANKLで刺激した RAW細胞において XPR1は、核内における局在が、多核の破骨細胞に分化すると細胞膜に移動することが明らかになった。また、 XRP1 siRNAを用いた研究から、 XPR1の発現量の抑制は、 RAW細胞に置けるRANKL刺激後の分化能を有意に抑制した。また、処理した RAW細胞では、カルシウム存在下におけるリン輸送能が有意に低下していた。さらに細胞外リンによる ERKのリン酸化の抑制を観察された。これらの結果より、 XRP1は細胞レベルにおいては、カルシウム/リン比の違いにより細胞内シグナル伝達に違いが確認された。初年度の計画において、 KOマウスの作製は予定のように進行しなかったが、細胞レベルでは、興味ある知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度においては、さらに詳細にXRP1の細胞レベルでの機能解明を行う。これまでの研究で、siRNAを用いてトランセプター機能低下を起こさせると、明らかに細胞外リン濃度に応答する細胞内カルシウム遊離能は低下した。また、細胞内リンを非代謝性のリンアナログに交換すると、リン応答性は明らかに阻害された。そこで、トランセプター XPR1蛋白のリン認識領域を明らかにする目的で、各種変異体を作製する。つぎに、細胞内領域に結合する蛋白質について、yeast-two hybrid法で検索を行う。昨年度、すでにトランセプターと結合する蛋白を同定したが、この膜蛋白は、脳室にのみ発現し、トランセプターが発現する他の組織では確認できなかった。 SLC34A3は膜貫通12回の蛋白質であり、現在ではカルシウムおよびリン流入に関与し、細胞膜とER膜に局在する,未同定の無機リンチャネルの活性化因子と考えられている。 SLC34A3は、細胞内領域にリン結合部位を有し、細胞内リン濃度を感知し、 XPR1トランセプターを活性化するものと推定された。そこで、平成24年度は SLC34A3とトランセプターの相互作用、 SLC34A3によるトランセプターの細胞内移行や細胞内局在化シグナルの解明を行う。また、 平成24年度に、XPR1-KOマウスを作製し、骨解析や、食事性ミネラルに対する生体応答を調べる。また、リン代謝マーカー(FGF23, klotho, PHEX, FRP-4などの)の変動を調べるとともに、血管や軟組織における異所性石灰化について検討する。さらに、PTH分泌、活性型ビタミンD合成、FGF23の分解についても、各組織単位で検討を加える。これらの実験により、骨や血管を含む複数の臓器における食事性カルシウム/リン比の影響を調べ、至適なミネラル摂取を考案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
我々は最初にコンストラクした XPR1遺伝子ノックアウトベクターでは、一部、スプライシングバリアントが存在しており、作製したマウス ES細胞では、 XPR1バリアントの発現が観察された。それで、再度、新しい遺伝子破壊用のコンストラクトの作成をやり直す必要が生じた。このため、当初、 KOマウスの遺伝子機能解析や病態解析に配分を予定していた金額の執行が遅れ、次年度に以下の金額 (723,674円)を繰り越す事態が生じた。そのため、平成24年度は、 XPR1 -KOマウス作製の為に、この繰り越し予算を使用する。また、 International Mouse Strain Resource (IMSR)において XPR1-KOの ES細胞が入手可能となったので、本繰り越し費用を ES細胞の購入 にも配分する予定である。このように、当初の計画で使用予定の各種費用が KOマウス作製に時間を要している為に、繰り越す必要が生じた。よって、平成24年度は繰り越した金額を、本年度予定予算に加算して、XPR1の個体および細胞レベルでの役割について研究を遂行する予定である。
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Research Products
(46 results)