2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23650514
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
岩本 直樹 香川大学, 工学部, 教授 (20325327)
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Keywords | 中世文学 / 平家物語 / 弓道 / 流体力学 |
Research Abstract |
本研究において日本古典文学の中でもっとも有名な作品の一つである平家物語を取り上げ、「扇の的」の記述について自然科学的な視点から検証を行なった。 (1) 扇の的の日時の決定:平家物語に記述されている旧暦(太陰太陽暦)の2月18日はグレゴリオ暦(いわゆる新暦)の3月28日と同定された。この日付は春分の日に近くすなわち日没は午後6時ごろとなる。太陽運動のシミュレーションの結果、屋島の東側では太陽は午後5時過ぎに隠れることがわかった。したがって、扇の的の時刻に関して多くの文学全集類の註釈に見られる記述「酉の刻=午後6時」は不適当であることがわかった。 (2) 扇の的までの距離(中世の「段」という距離の単位):三十三間堂の弓の競技(通し矢)の記録から的までの距離(120 m)における命中の標準偏差を計算した。この結果を使い、扇の的までの距離「七八段」において一段=2.7 m説と一段=11 m説を比べるとそれぞれ命中率42 %、3.6 %を得た。したがって、一段=2.7 m説のほうが妥当という結果を得た。 (3) 波の影響(波高、風による船のゆれ(的の揺らぎ)の効果):瀬戸内海歴史民族資料館において当時の船に関する調査を行った。専門員による情報提供を受け材質、構造などの概略が把握できたが、当時の船は現存しないため、定量的な評価、計算には至らなかった。適当な数値を仮定した半定量的評価は可能であり、現在継続中である。
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