2011 Fiscal Year Research-status Report
わが国の近代精神医療史資料の保存と利用に関する基盤整備
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23650564
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
橋本 明 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (40208442)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 治 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (10189029)
板原 和子 大阪体育大学, 健康福祉学部, 教授 (50390175)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 医学史 / 精神医療史 |
Research Abstract |
平成23年度は、学会および研究会などの機会を活用して、近代精神医療史資料の保存と利用への関心を広く共有してもらうための活動に重点を置いた。 まず、研究代表者が大会会長として、10月29日・30日に愛知県立大学で開催した第15回精神医学史学会でシンポジウム「近代精神医療史資料の保存と利用」を企画した。国内外から4人のシンポジスト(岡田靖雄[青柿舎]、松岡資明[日本経済新聞社]、Bert Boeckx[OPZ Geel, Belgium]、廣川和花[大阪大学])を招いて、資料保存と利用に関する講演と討議を行った。また、学会会場で精神医療史研究家・小林靖彦(1919-2007)の写真資料を中心に「小林靖彦回顧展」を開催した。 他方、名古屋駅周辺の会場で「近現代精神医療史ワークショップ」を2回(12月11日および3月25日)を開催し、精神医療史に関する発表と討議を行った。1回目のワークショップでは5人(宇都宮みのり[金城学院大学]、橋本明[愛知県立大学]、西川薫[新潟医療福祉大学]、キム・ユミ[コロンビア大学]、後藤基行[一橋大学])、2回目も5人(安田理人[東北大学]、佐々木亜紀子[愛知淑徳大学]、川端美季[立命館大学]、板原和子[大阪体育大学]、橋本明[愛知県立大学])が登壇し、各人について1時間の発表・討議を行った。 さらに、研究代表者は東京(11月25日・26日、昭和大学附属烏山病院など)および愛媛(1月20日・21日、愛媛県立図書館など)を訪れ、各施設・地域の精神医療史資料の収集および関係者への聞き取りを行った。加えて、3月7日~16日にオランダおよびベルギーを訪れ、精神医学博物館(Het Dolhuys[ハーレム]、Museum Dr. Guislain[ゲント])の視察および精神医学博物館設置プロジェクト(OPZ[ゲール])に関する聞き取り調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「近代精神医療史資料の保存と利用」を調査するにあたって、まずはこの問題の重要性を関係者・関係機関に広く共有してもらうことが必要である。その意味で、精神医学史学会でのシンポジウムおよび「小林靖彦回顧展」の企画は当該研究の初年度にとって絶好の機会であり、少なくとも参加者には「近代精神医療史資料の保存と利用」をアピールできたと考える。 また、比較的若手の研究者を発表者として開催した「近現代精神医療史ワークショップ」では、精神医療史に関する各自の発表とともに、精神医療史資料の保存と利用についての意見を交換する場として機能した。 一方、現地調査を行うことができた場所はごく限られていた。国内で訪問した施設については、精神医療史資料の保存と利用の現状を知るためのパイロット・スタディという位置づけになるだろう。国外での調査については、わが国における「精神医療史資料館・博物館(仮称)」の設置に向けて大いに刺激となったが、同時にわが国固有の困難なハードルや課題も見えてきた。 以上をまとめると、もともとの計画にはなかった企画や調査も少なくないが、大きな方向としては「精神医療史資料の保存と利用」に関して、さまざまな可能性や限界を検討でき、研究目的はおおむね順調に達成されていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の平成23年はパイロット・スタディ的に少数の地点・施設(東京、愛媛)を選んで精神医療史資料の保存と利用に関する調査したが、今後は他の道府県にも調査の網を広げていく予定である。ある程度調査が完了した時点で、研究成果をウェッブ上などに公開していくことになろう。 また、わが国において「精神医療史資料館・博物館(仮称)」の設置を実現するために必要な条件について、さらに検討を重ねていく。そのために、国内外の関係者を招いてセミナーを行う、あるいは現地を訪れて関係者と討議を行うことなどを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費のおもな使途として、まず全国の精神医療史資料の保存と利用に関する調査旅費が挙げられる。また、6月にドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州で開催される精神医療史に関する国際会議に参加し、同時に当地の精神医学博物館を視察するための調査旅費を予定している。他方、「近現代精神医療史ワークショップ」も引き続き開催する予定であり、発表者への旅費・謝金に研究費を充てる。その他、関係資料の購入や貸借に関わる費用も予定している。
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Research Products
(13 results)