2011 Fiscal Year Research-status Report
脊椎動物胚発生を用いた新たな癌分子標的治療への応用
Project/Area Number |
23650590
|
Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
田中 正光 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20291396)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 胚発生 / ツメガエル / 集団移動 / 神経堤細胞 / 可塑性 / トランスジェニック |
Research Abstract |
本申請は、癌の浸潤や転移に対する治療標的分子や化合物を選別するために、胚発生過程で一過性に出現する癌と類似した移動様式や未分化性を有する細胞集団をアッセイ法に用いるものである。モニターが容易で多検体のスクリーニングに適した、ツメガエル胚による生物アッセイ法を1次スクリーニングとして、癌の集団移動や可塑性を制御する化合物・分子の選別を行っている。H23年度は、癌細胞の集団移動を制御する化合物の同定を目標に、アフリカツメガエル初期胚をツールに用いたスクリーニングを行った。所属機関の臨床腫瘍学講座との共同研究の基に供与された低分子化合物ライブラリー約1000種類を用いて、胚の飼育水中に添加した。細胞集団移動の指標として神経堤細胞(CNC)の移動パターンに影響するものを、CNCのマーカーであるFoxD3を用いて効率化した全胚in situハイブリダイゼーション法を行うことにより選別した。その結果、他の器官の発生異常を伴わずにCNCの移動を阻害するものとして、N-(2,6-ジクロロフェニル)-2-アミノフェニル酢酸 やα-アルキル-β-メトキシシクロペンテノン など10種類の低分子化合物が得られた。また、癌の可塑性を制御する化合物・分子を選別するツールとして、ツメガエル消化管の変態に際して幼生上皮の脱分化により出現する成体上皮の幹細胞を蛍光で可視化可能なトランスジェニック個体を作製している。同幹細胞のマーカー遺伝子として知られているShh(Sonic hedgehog)のプロモーターに、EGFP蛍光遺伝子を融合したレポーター遺伝子を導入したトランスジェニック個体(Shh-EGFP Tg)を作製し、現在F1(第二世代)を得ている段階にある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ツメガエル胚を用いて設定した2つの主なアプローチとして、神経堤細胞を指標とした集団移動の阻害化合物の一次選別がほぼ予定どおりに終了し、複数の候補化合物を得ることができた。他の器官への影響がほとんどなく、胚全体の発生・成長に問題がないため特定の細胞集団移動に特化した阻害効果だと評価でき、より副作用の少ない治療候補化合物として期待できる。また変態期消化管の幹細胞の可視化のためのトランスジェニック動物の作製を進行させ、第一世代のツメガエルでの蛍光の発光が確認できており、その子孫として第二世代が得られれば安定した実験系として使用可能になると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
H23年度に得られた低分子化合物の生物学的機能をツメガエル個体による検索と、癌細胞の移動に対する機能評価を進める。ツメガエル胚での検索ポイントは、これまでに観察している神経堤細胞の集団移動抑制効果は同細胞自身に対する自律的なものか、あるいは周囲の他の細胞に対する影響による間接的なものかを判定する。一方、癌細胞での評価は、胃・大腸癌、肺癌、メラノーマの細胞株に対して、培養条件下での細胞移動、増殖アッセイにおける変化を測定する。さらに免疫抑制マウスへの同癌細胞の移植による腫瘍の浸潤、転移に対する阻害効果をin vivoで評価してゆく。また、それらの標的分子の同定のため化合物に結合する蛋白質を同定してゆくが、それに必要な候補化合物のプローブ化が現在難航している。プローブ化の専門家との共同研究も視野に入れて対処してゆきたい。もう一つは、消化管の組織幹細胞の可視化トランスジェニック個体の作製を完成させる。それを用いて、消化管幹細胞の誘導や維持に影響する化合物の選別をスタートさせてゆく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度の実験内容の遂行においては、すでに用意していたツメガエルや装置の使用でほぼ賄えたため、消耗品の使用額を予定以下に抑えた。その分をH24年度に予定している細胞培養による機能アッセイや、免疫抑制マウスを用いた癌の浸潤・転移の評価に必要な培地、血清、動物と飼育費に加算して使用するように計画した。その他の消耗品として主なものは、抗体、化合物のプローブ化のための合成費などである。新たな備品としては特に予定していない。
|