2011 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞より誘導した樹状細胞と理想的がん抗原を利用したがんの細胞免疫療法の開発
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23650609
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
西村 泰治 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (10156119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粟井 博丈 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (10433020)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 樹状細胞 / がん抗原 / 腫瘍免疫 / T細胞 / がん免疫療法 / 拒絶反応回避 |
Research Abstract |
ヒトiPS細胞よりin vitroにおいて分化誘導した樹状細胞(iPS-DC)を、免疫細胞療法に実用化するためには、(1)大量のiPS-DCを調整する技術の開発と、(2) iPS-DCドナーと患者(レシピエント)との間の、HLAを主とする組織不適合性の問題をクリアする必要がある。本研究では、(1)の問題を解決するために、ヒトの皮膚線維芽細胞にレンチウイルスベクターを用いて、Oct3/4, Sox2, c-Myc, Klf4の4つの初期化遺伝子を発現させ、リプログラミング後にミエロイド系細胞に分化させてc-Mycの発現を失った細胞に再度、c-MycおよびBMI1を強制発現させることにより、大量のiPS細胞由来のミエロイド系細胞を得ることに成功した。この細胞を、GM-CSFやIL-4を用いて培養することにより、iPS-DCを大量に樹立できた。 (2)の問題については、ヒトiPS細胞が有する内因性のHLAクラスI関連分子の発現を欠損させるために、TAP2遺伝子を標的破壊したヒトiPS細胞を作製した。このTAP2欠損iPS細胞より分化させたiPS-DCでは、内因性のHLAクラスI分子の発現が著明に低下し、アロHLAクラスI反応性細胞傷害性T細胞による拒絶反応から逃避できることが判明した。この細胞に、日本人で頻度が高いHLAクラスI遺伝子を発現させることにより、当該HLAクラスI分子のみを発現するiPS-DCを作製する方法を開発した。また将来、iPS-DCを臨床応用する際には、OP9フィーダー細胞と血清を使用せずに、ヒトiPS細胞からiPS-DCを分化誘導する方法を確立する必要がある。そこで、種々の無血清培養液や特殊な表面加工を施した培養用容器を利用して、ヒトiPS-DCを分化誘導する方法について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は、癌抗原遺伝子を強制発現させたヒトiPS-DCの作製を研究目標に掲げていたが、iPS-DCの実用化に向けてiPS-DCの収量を増やすこと、ならびにアロiPS-DCに対する拒絶反応を回避する方法の確立が、より重要な研究課題であると判断したため、これを最優先の研究課題とすることに変更した。収量の問題については、細胞をアポトーシスから守り、その増殖能を向上させるc-MycとBMI-1の強制発現により解決することが出来た。 さらにヒトiPS細胞における内因性HLAクラスI分子の発現を抑性するための、TAPあるいはβ2ミクログロブリンの遺伝子を標的破壊したホモ接合体細胞の樹立は、非常な困難を伴うと想定していたが、幸いにもTAP2遺伝子の標的破壊ヒトiPS細胞の樹立に成功したことにより、当初の目標をはるかに上回る研究成果が得られたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究成果により、iPS細胞ドナーの内因性HLAクラスI分子の発現を欠き、日本人で頻度が高いHLAクラスI遺伝子を発現する細胞を、大量に得ることができたので、この細胞に当初は平成23年度に実施する予定であった、理想的な癌抗原や免疫応答を促進する分子をコードする遺伝子を、強制発現させる。このようなiPS細胞からin vitroで分化誘導したiPS-DCが、癌抗原に特異的なCTLおよびTh1細胞を活性化できるかどうか検討する。さらに、平成23年度に引き続いてヒトiPS-DCをマウスフィダー細胞および異種血清が存在しない、いわゆるXeno-freeシステムで樹立するシステムについて、さらなる改良を加えて最適化された培養方法の確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に、多くの研究課題を解決するために、平成24年度の研究費を平成23年度に前倒しして使用したため、平成24年度は細胞培養に必要な培養液や培養用プラスチック製品等の消耗品の購入に、研究費のほとんどを費やす予定である。
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[Journal Article] Generation of dendritic cells and macrophages from human induced pluripotent stem cells aiming at cell therapy2011
Author(s)
Senju, S., Haruta, M., Matsunaga, K., Fukushima, S., Ikeda, T., Takamatsu, K., Irie, A., Nishimura, Y.
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Journal Title
Gene Therapy
Volume: 18
Pages: 847-883
Peer Reviewed
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[Journal Article] Immunotherapy with pluripotent stem cell-derived cells2011
Author(s)
Senju, S., Matsunaga, K., Fukushima, S., Hirata, S., Motomura, Y., Fukuma, D., Matsuyoshi, H., Nishimura, Y.
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Journal Title
Seminars in Immunopathology
Volume: 33
Pages: 603-612
Peer Reviewed
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