2011 Fiscal Year Research-status Report
ホウ素中性子捕捉治療の実用化のためのポジトロンCT診断薬標識合成法の開発
Project/Area Number |
23650610
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福田 寛 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (30125645)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古本 祥三 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00375198)
岩田 錬 東北大学, サイクロトロンラジオアイソトープセンター, 教授 (60143038)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | がん / BNCT / BPA / PET |
Research Abstract |
がんのホウ素熱中性子捕捉治療(BNCT)で用いるフッ素18標識10B-パラボロノフェニルアラニン(18F-FBPA)はポジトロンCT(PET)で腫瘍および正常組織への集積を評価することにより、治療適応判断や線量決定に必須のPET薬剤である。本研究では、比放射能が高く大量製造可能なフッ素18アニオン(18F-)を原料として、高収量で18F-FBPAが得られる実用的合成法の確立を目指す。 新規合成経路として、ブロモニトロベンズアルデヒド(BNB)を出発原料として、多段階合成によりFBPAの合成可能性を検証した。なお、平成23年度の東日本大震災で、実験予定施設であった所属機関で18Fを用いた実験ができなくなったため、非標識条件で実験を行った。まず、BNBのホウ素化反応をPd触媒下で試みた。Pd配位子、アルカリ、溶媒、反応温度・時間に関して種々の条件で反応を行ったが、目的とするホウ素体が得られなかった。そこで、BNBをフッ素化したBFB経由の合成経路について検討した。BFBをNaBH4で還元し、ベンジルアルコール体への返還を試みたところ、良好な収率で目的化合物を得られた。ベンジルアルコールは既存法で容易に臭素化が可能である。そこで、その臭素体を用いて、丸岡触媒によるアミノ酸骨格の構築を試みたところ、良好な収率で目的とするアミノ酸誘導体を合成できた。このアミノ酸誘導体をホウ素化できれば、FBPAの骨格が構築できたことになる。しかし、予備的なホウ素化反応を試みたところ、副反応のホモカップリングが進行し、目的物は得られなかった。今後、Pd配位子やベース、溶媒の条件を詳細に検証し、反応条件の最適化を進める必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、3月11日の東日本大震災の影響で、フッ素18を製造するサイクロトロンがダメージを受け、それを用いた実験を行えなかった。そこでフッ素18を使用しない非標識条件化でFBPAの新規合成ルートの探索実験を展開した。当初は、ニトロ誘導体に対して、[18F]フロロベンゼン誘導体を合成し、続いて、ベンジル位臭素化反応を利用して18F標識中間体を合成した後、最後に、丸岡らによって開発された不斉相間移動触媒(丸岡触媒)によるα-アミノ酸誘導体の不斉アルキル化反応を利用して、目的とする[18F]F-FBPAを合成するという計画であったが、18Fを使用できなかったため、最初のフッ素化反応以降について反応条件の検討を進めた。非標識条件ではあるが、丸岡触媒により、FBPAのフェニルアラニン骨格の構築までを達成したことから一定の成果はあったといえる。一方、ベンゼン環へのホウ酸基の導入に関しては最適化に至っておらず、平成24年度に持ち越しとなった点については、やや計画に遅れが生じたといえる。しかし、平成24年度で十分遅れを挽回できる程度であり、全体としての評価は、やや遅れているとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、一部非標識条件化で合成条件検討を進めるとともに、フッ素18を使用した標識条件化でFBPAの合成を目指す。 フェニルアラニンのベンゼン骨格にホウ素を導入する反応条件の確立が必要であり、パラジウム触媒を用いたホウ素化反応の条件最適化をおこなう。まず立体的嵩高さの異なるパラジウム配位子を複数比較検討し、目的とするホウ素体を与えるものを選別する。次いで反応溶媒及び塩基の種類を変えながら、ホウ素体の収率を向上させる。また、パラジウム触媒反応経由での合成で十分な収率の向上が難しい場合は、副反応に十分注意を払いながら、アルキルリチウムを用いたホウ素化反応を検討する。 フッ素18を用いた18F標識化に関しては、ブロモニトロベンズアルデヒド(BNB)に対するフッ素18かを検証し、反応条件の最適化を行う。その標識体を還元、臭素化を行い、丸岡触媒反応により、フロロフェニルアラニン骨格を構築する。そして、上述実験で確立したホウ素化法に従い骨格にホウ素を導入して、最後に酸性条件化で脱保護を行い18F-FBPA合成を達成する。実用性の観点からは、ニトロフェニルアラニン骨格を予め構築しておいて、フッ素18標識化を検討する。全合成収率及び操作手順の簡便性の観点から、最終的に標識合成経路の確定を行う。 当該標識合成法で合成した18F-FBPAについては、全身分布動態や腫瘍取り込み率に関して動物実験により調べ、先行研究との整合性を検証する。また、小動物PET撮像を実施し、より詳細に動態並びに腫瘍集積性を解析し、BNCTに適した腫瘍画像化性能を検証する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究推進方針に従って研究を遂行するに当たって、18F製造用原料のO-18水(物品費)、試薬や試験管・注射器、自動合成装置部品等などの購入費(物品費)、生物実験用小動物(物品費)、研究を着実に遂行するための実験サポートとして、大学院生をアルバイトとして雇う費用(謝金)、研究成果の発表や実験遂行上必要となる協力研究機関への出張に関する費用(旅費)、その他として、研究成果の論文化に伴う英語論文原稿の校閲費(謝金等)に、研究費を使用する計画である。
|