2011 Fiscal Year Research-status Report
銀ナノ粒子の魚類生態毒性に関する網羅的な詳細リスク評価
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23651028
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
柏田 祥策 東洋大学, 生命科学部, 教授 (20370265)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 銀ナノ粒子 / 銀イオン / メダカ / 生態リスク |
Research Abstract |
本研究は,塩濃度およびpHに起因する銀ナノ粒子の挙動を明らかにして,メダカ受精卵を用いて銀ナノ粒子の生態影響が粒子に由来するものか銀イオンに由来するものかを明らかにするものである。 ERM中におけるpH4, pH7およびpH9での凝集体径は,超純水中におけると同様にpH4において最大であった。また,pH7かつ0.5倍ERMにおけるゼータ電位および凝集体径は,それぞれ-29.3±4.3 mV および573.2±42.0 nmであった。さらにERM濃度を30倍まで増加させた場合,凝集体径は超純水における値と比較して最大約8倍に増大した。 銀イオンのみを曝露させることができる「銀ナノ粒子固相化ウェルプレート(SNPP)」を新規に開発し,試験水(ERMまたは超純水;pH4,7または9)を添加した後,孵化までの経過を観察した。孵化後は,また銀ナノ粒子として銀ナノコロイド(SNC)を使用した。SNPP試験区において,試験水にERMを使用した胚では,心拍数低下,孵化遅延,眼球などの発達阻害が確認された。一方,超純水を使用した胚では,曝露12時間後に全個体で死亡が確認された。SNC試験区において,ERMを使用した胚では,pH4において心拍数の低下および孵化遅延が確認された。pH7およびpH9においても心拍数の低下が確認された。また超純水を使用した胚では,pH4において12時間後に全個体が死亡し,pH7において心拍数の増加,孵化遅延,死亡率の増加などが確認され,pH9において心拍数の増加,早期孵化,死亡率の増加などが確認された。毒性については,pH4において最も高い毒性を示したが,ERM使用時には毒性が緩和される傾向を示した。低pHにおいて銀から解離する銀イオン量が増加することを確認した。 毒性は酸性pH依存性を示すとともに,SNCの毒性には銀イオンが大きく寄与していると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は,1)環境要因による銀ナノ粒子の挙動研究,2)銀ナノ粒子固相化ウェルプレートを用いた環境要因と毒性研究,3)メダカマイクロアレイ研究,であった。3)については,限界解析中であることから当初の計画を達成している。それ以上に現在は次年度計画である,1)卵膜透過メカニズム,2)遺伝子発現メカニズム,3)個体群レベルにおける影響などを行っている。以上のことから,本研究は当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
環境要因によって左右されるであろう銀イオンの解離および銀ナノ粒子の挙動を物性の面から解析を行うとともに,毒性発現の分子カスケード,タンパクレベルでの酸化影響および生体防御機構,病理学的評価と個体群群集解析との相関などについて検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
曝露実験によって恒温器にスペース不足が発生しているため,恒温器購入に85万円,残金を分子実験試薬費として使用する。
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Research Products
(3 results)