2011 Fiscal Year Research-status Report
低炭素型の技術開発と産業育成対策に関する日中比較分析
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23651034
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
李 志東 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (80272871)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 中国 |
Research Abstract |
H23年度では、計画通りに、日中両国の電動自動車(EVを中心に)と再生可能エネルギー発電(風力と太陽光発電を中心に)における技術水準、コスト、技術開発と産業育成政策の動向などに関する調査研究を行った。それに加え、3.11福島原発事故を機に、中国もより安全な電力需給システムを模索し始めたので、原子力発電技術、安全管理体制、天候に左右されない低炭素型安定電源としてのガス火力やバイオマス発電についても研究調査を行った。精査が必要であるが、以下のことが暫定的結論として得られた。 (1)EVの技術水準は、日本の方が高いが、日中の技術格差が縮小しつつある。価格性能比でみる国際競争力及び国内における既存自動車との競争力は、中国が日本を上回っている。中国政府がEVを主軸とする電動自動車産業を国際競争力のある新興産業として戦略的・計画的に育成していることが功を奏したと考えられる。共通課題はインフラ整備と国際基準作りである。(2)風力発電設備の技術水準は中国が、太陽光発電設備の技術水準は日本が相対的に高いが、国際競争力や既存電源との競争力は中国が勝る。一方、系統連系技術や電力安定供給の管理水準などは日本が勝る。普及対策では、日本がFITを法制化したばかりだが、中国はFITに加え、初期投資への補助、大型プロジェクトの公開入札による価格設定など多様な政策メニューを揃えつつある。(3)中国は、安全確保を前提とする原発促進の基本方針が確立されている一方、地産地消・小型分散電源としてのガス火力やバイオマス発電にも力を入れ始めている。課題はコスト競争力の向上である。 研究成果は、日中両国の政策立案者や産業界との意見交換、学会発表と論文掲載などを通じて発信している。本研究は、学術的貢献だけではなく、日中両国の低炭素社会に向けた政策立案やビジネスモデルの創出にとっても有意義であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3.11福島原発事故の影響で、両国での現地調査が予定通りに実施できるかどうかは心配したが、年度前半に文献調査やWeb情報の収集に、後半に現地調査に集中することで、計画通りの調査研究を遂行出来た。また、研究対象を当初の「低炭素型の技術開発と産業育成」から「より安全な低炭素型の技術開発と産業育成」へと広げたことで、本研究の意義はさらに高くなったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の調査研究の結果を踏まえて、なぜ日中両国において、EVや再生可能エネルギー発電などにおける技術格差やコスト格差などが発生したかについて、対策システムの比較分析を通じて解明する。さらに、技術開発と産業育成に資する要因を特定し、最適対策システムの理論化を試みると同時に、政策提言を纏める。最後に、WS開催や学会発表などを通じて、研究成果を発信し、「低炭素技術開発と産業育成論」の精緻化を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
聞き取り調査・意見交換と学会発表などの旅費支出が最大項目である。前年度残金の40633円を旅費支出に充てることに加え、実施計画書の通り、効率よく研究調査を行う予定である。
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Research Products
(16 results)