2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23651043
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松岡 俊二 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 教授 (00211566)
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Keywords | 地球持続性 / 社会的能力 / 環境ガバナンス / 環境イノベーション / 制度論 |
Research Abstract |
本挑戦的萌芽研究「制度論アプローチによる地球持続性学の構想」は、社会科学における制度論研究と開発協力における能力構築論とを融合させ、進化させることにより、持続可能 な制度形成という観点から地球持続性学を構築することを目的としたものである。また東日本大震災と福島原発事故を受け、2012年度の研究計画では、持続性と震災復興、今後の日本や世界の方向性を示す環境イノベーションや環境ガバナンスのあり方について研究することとした。特に環境ガバナンスの研究においては、アジアの環境ガバナンスを制度論という視角から検討し、その特徴や発展メカニズム、さらにはアジア地域統合と環境ガバンンスとの関係を考察した。アジア地域環境制度が何らかの基軸制度を持ち、補完しあう関係にあり、全体として東アジアの地域環境に関わる「制度の束」あるいはビルディング・ブロックとして機能しているのか、それともお互いに競合・分散・相殺する関係(スタンブリング・ブロック)にあるのかは重要な論点であるが、現状ではどちらとも評価が難しく、むしろ地域統合のあり方をめぐり様々な試行錯誤が行われている段階と評価した。また、インフォーマル性、合意、開かれた地域主義といったアジア地域制度の3大特徴が今度どのように変容するのか、しないのかも重要なポイントであることを明らかにした。さらに、現在のアジア環境ガバナンスには、EANET、NEASPEC、NOWPAPといった環境問題のために設立された制度と、日中韓TEMMサミット、ASEAN+3環境大臣会合、東アジア首脳会議・環境大臣会合といった首脳会合(政治サミット)の環境分野としての制度が並存しており、今後の東アジアの地域環境ガバナンスは、ある意味で「環境専門制度」と地域統合・地域共同体を志向する政治協力制度の「部分・補完制度としての環境制度」の両輪によって展開していくとの展望を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本挑戦的萌芽研究「制度論アプローチによる地球持続性学の構想」は、社会科学における制度論研究と開発協力における能力構 築論とを融合・進化させることにより、途上国と先進国が持続的に共存しうる開発協力のあり方を研究することにより、持続可能 な制度形成という観点から地球持続性学を構築することを目的としたものである。 また東日本大震災と福島原発事故を受け、2012年度の研究計画では、地球持続性と震災復興、今後の日本や世界の方向性を示す環境イノベーションや環境ガバナンスのあり方について研究することとし、以下の2点から、おおむね研究は順調に進展していると評価できる。 地球持続性と震災復興については、特に福島原発事故の前後におけるリスク認識や安全行政への信頼意識について、福島県いわき市を対象にインタビュー調査などを実施し、事故前における伝統的な信頼意識、事故後における主要価値類似性(SVS)にもとづく信頼意識への変化を明らかにした。こうしたリスク意識や信頼意識の変化に基づき、今後はリスク・ガバナンスのあり方を展望することが可能となったと考えている。 さらに、環境イノベーションや環境ガバナンスについては、特にアジアの環境ガバナンスについて調査研究を行い、アジアの環境ガバナンスの現状や問題点、今後の方向などを調査研究した。こうした調査研究から、今後の東アジアの地域環境ガバナンスは、ある意味で「環境専門制度」と地域統合・地域共同体を志向する政治協力制度の「部分・補完制度としての環境制度」の両輪によって展開していくとの展望を示した。 今後はこうした地域環境ガバナンスの研究成果の上で、国内の環境ガバナンスと環境イノベーションと関係性についても研究していくことが可能となったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本挑戦的萌芽研究「制度論アプローチによる地球持続性学の構想」は、社会科学における制度論研究と開発協力における能力構築論とを融合させ、進化させることにより、途上国と先進国が持続的に共存しうる開発協力のあり方を研究することにより、持続可能な制度形成という観点から地球持続性学を構築することを目的としたものである。特に2011年3月11日の東日本大震災と福島原発事故を受け、従来の研究計画では、地球持続性と震災復興のあり方、今後の日本や世界の方向性を示す環境イノベーションや環境ガバナンスのあり方について研究することとし、最終年度の2013年度は以下の2つの方向から調査研究を行い、研究のまとめを行う。 地球持続性と震災復興のあり方については、特に福島原発事故の以外を受けた福島県いわき市や双葉郡など主な対象とし、事故の前後におけるリスク認識や安全行政への信頼意識について、インタビュー調査などにより、リスク意識や信頼意識の変化を調査研究し、今後の原子力規制やリスク・ガバナンスのあり方を研究する。 また、環境イノベーションや環境ガバナンスについては、今までのアジアの環境ガバナンスに関する調査研究の成果を踏まえつつ、こうした国際的な環境ガバナンス、一国の環境ガバナンス、国内の地域環境ガバナンスなどの相互関係について調査研究をする。さらに、こうした環境ガバナンスと環境イノベーションと関係性についても研究していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の目的である「制度変化と社会的能力形成アプローチによる地球持続性学の構築」を達成するため、 最終年度の2013年度は、以下の2つの方向から調査研究を行い、本研究の「まとめ」を行う。 (1)地球持続性と震災復興のあり方については、特に福島原発事故の以外を受けた福島県いわき市や双葉郡など主な対象とし、事故の前後におけるリスク認識や安全行政への信頼意識について、インタビュー調査などにより、リスク意識や信頼意識の変化を調査研究し、今後の原子力規制やリスク・ガバナンスのあり方を研究する。 (2)また環境イノベーションや環境ガバナンスについては、今までのアジアの環境ガバナンスに関する調査研究の成果を踏まえつつ、こうした国際的な環境ガバナンス、一国の環境ガバナンス、国内の地域環境ガバナンスなどの相互関係について調査研究をする。さらに、こうした環境ガバナンスと環境イノベーションと関係性についても研究する。最終年度の2013年度の研究費使用においては、以下の使用計画を予定する。 (1)機器等の用品費(20万円程度)、(2)技術進歩、環境イノベーション、社会的規制、震災復興、環境ガバナンスなどに関連する文献資料に係る図書費(25万程度)。(3)資料収集 などに関連する国内調査旅費(20万程度)。(4)資料収集やデータ整理などに関するRA人件費(20万程度)。(5)資料整理やデー タ整理に関連する文房具や消耗品費(10万円程度)。(5)論文投稿費などその他経費(6.4万円程度)
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Research Products
(10 results)