2011 Fiscal Year Research-status Report
修復酵素反応経路間の干渉による放射線DNA損傷の非線形な修復応答
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23651049
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
横谷 明徳 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究主幹 (10354987)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 放射線 / DNA損傷 / クラスターDNA損傷 / 塩基除去修復 / 干渉 / グリコシレース / プラスミドDNA / DNA2本鎖切断 |
Research Abstract |
本年は、クラスターDNA損傷に対する塩基除去修復酵素の作用機序の違いがクラスターDNA損傷の難修復特性にどのように関わるかを明らかにすることを目的とし、以下の研究を実施した。C6+イオンビーム(13及び60 keV/micrometer)及びX線の照射によりプラスミドDNA(pUC18)に生じたクラスター損傷に対した後、プリン損傷及びピリミジン損傷を主に認識除去する大腸菌由来の塩基除去修復酵素(それぞれFpg、Nth)を作用させ、その修復産物であるプラスミドDNAの分子量・コンフォメーション変化を電気泳動法などにより観察した。この際、2種類の酵素の処理の順番を様々に変えた時に、ニッキング活性にどのような差が見られるのかについて調べた。その結果、C6+イオンビームを照射した場合はFpgを先に処理したものの方が、同時処理やNthを先に処理したものより損傷を持たない閉環型分子の線量当たりの残存量が約5%小さい傾向にあった。これらの結果は、最初に処理した酵素によるクラスター損傷を構成する要素の立体配置の変化は、二番目の酵素の活性に大きな影響を与えないことを示唆している。C6+イオン照射により生じるクラスター損傷を構成するほとんどの塩基損傷は、塩基除去修復酵素により鎖切断に変換され、それらのうちのあるものは生細胞中では2本鎖切断になると考えられる。これらの2本鎖切断は、放射線で直接生じた2本鎖切断と同様、細胞に対して致死作用があると推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年の3月11日の大震災により実験室が大きく被災したため、研究に遅れがあった。現在は被災した実験施設は復旧し、順調に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
高LETイオンビーム照射によりDNA分子中に生じたクラスター損傷に対して、塩基除去修復酵素の反応順序の入替えに対する効果は予想よりも小さいことが明らかになった。これは、実際の照射により生じるクラスターの構造が従来予測されているような塩基損傷の組み合わせではないことを示している。次年度はさらにDNA変性を利用する新しいアッセイ法により、クラスターを構成する個々の損傷を突き止めると同時に、それに対する修復酵素を選び反応経路間の干渉が起こるか否かを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度についても、生化学的実験を行うための試薬等の消耗品を、本研究費により購入して実験を継続する。また初年度に得られた成果を国際会議(放射線DNA損傷に関する国際ワークショップ、プラハ、チェコ)で発表するための旅費として使用する予定である。
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Research Products
(7 results)