2012 Fiscal Year Research-status Report
修復酵素反応経路間の干渉による放射線DNA損傷の非線形な修復応答
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23651049
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
横谷 明徳 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究主席 (10354987)
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Keywords | 放射線、X線、粒子線 / クラスターDNA損傷 / 塩基除去修復 / 酵素作用機序 / DNA変性 |
Research Abstract |
クラスターDNA損傷に対する塩基除去修復酵素の作用機序の違いがクラスターDNA損傷の難修復特性にどのように関わるかを明らかにすることを目的とし、これまでにC6+イオンビーム及びX線の照射によりプラスミドDNA(pUC18)に生じたクラスター損傷に対する塩基除去修復酵素(Nth及びFpg)の作用させる順序を変えた時のニッキング活性にどのような差が見られるのかについて調べてきた。その結果、いずれの照射によっても最初に処理した酵素によるクラスター損傷を構成する要素の立体配置の変化は、二番目の酵素の活性に大きな影響を与えないことを示唆する結果を得た。この結果は、クラスター損傷を構成するほとんどの塩基損傷が、塩基除去修復酵素により鎖切断に変換され、それらのうちのあるものは生細胞中では2本鎖切断になることを示している。そこで新たに照射DNAを1本鎖に変性させた後に損傷のない正常な1本鎖DNAと再結合(アニール)させることで、損傷のクラスター状態を解いた上で塩基除去修復酵素処理を行う新しいアッセイ方法の開発を試みた。この方法により最初の酵素により生じた中間生成物によらず、クラスター損傷の構造についてより詳細な情報が得られると期待される。DNA変性に関して様々な条件をテストした結果、照射したプラスミドDNAを50%ホルムアミドを加え5分間60度まで加熱する条件が最適であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射線照射したDNA試料に対して、作用させる塩基除去修復酵素の処理の順序を変えても結果が大きく変わらなかった。このことから、当初の予想とは異なりクラスター損傷を構成するほとんどの塩基損傷は塩基除去修復酵素により鎖切断に変換され得る可能性を示すことができたた。これらの実験的知見が得られたことにより、当初の研究計画の約70%は達成できたと考えられる。クラスターを構成する個々の損傷の配置の詳細をさらに調べるため、DNA変性・アニールを利用した新しいアッセイ方法の開発を同時に行ってきたが、実験室建屋の老朽化に伴う耐震補強工事のため、H25年1月~H25年3月までの3カ月間実験室の使用停止を余儀なくされた。この影響により、開発したアッセイ方法を実際の照射DNA試料に適用した実験結果がまだ得られていない。またこれらの未達成の実験の成果も、H25年度には学会等で発表して行く必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
未達成であるDNA変性・アニールを利用したアッセイ方法を、実際に照射DNA試料に適用し、クラスターDNA損傷を構成する個々の損傷の配置に関する情報を得る予定である。またこれらの情報を加え、これまでに得られている修復酵素の作用機序に関する知見と合わせ、5月に千葉で行われる国際会議(Heavy Ion Therapy and Space Radiation Symposium (HITSRS 2013))で発表するとともに、専門分野の研究者と討議を行う。その討議を踏まえ、必要な追加データを得た後に専門誌(Radiation Research)に成果を発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年の4月から6月までの間に、実験で必要となる試薬や酵素類の消耗品の購入に充てる。また得られた成果を発表するため、5月に千葉で行われる国際会議に参加する。そのための出張費にも充当する予定である。
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Research Products
(3 results)