2011 Fiscal Year Research-status Report
クロロエテン類センサーキナーゼの構造・機能解明とバイオレメディエーションへの応用
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23651063
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
尾高 雅文 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20224248)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ヒスチジンキナーゼ / PASドメイン / 2成分系伝達システム / クロロエテン / バイオレメディエーション |
Research Abstract |
クロロエテン類は土壌・地下水の主要な汚染源の一つであり、汚染地でのクロロエテン類検出系、完全分解能を有する微生物の検出系の開発は急務である。本研究では、Dehalococcoides 属細菌由来クロロエテン類センサーヒスチジンキナーゼ(SHK)を材料として、クロロエテン類およびその分解微生物の検出・定量系を開発することを目的としている。平成23年度は、機能が未知のRDaseを転写制御し、株間で保存されているDET-SHKの大腸菌による発現系を構築し、そのキャラクタリゼーションを行った。全長DET-SHKは不溶性画分にのみ発現したため、一次構造から予測されたセンサードメインとヒスチジンキナーゼドメインをそれぞれ発現するプラスミドを構築し、いずれも可溶性画分に発現させることに成功した。センサードメインを精製後、多角度光散乱法を用いて分子量を測定し、他の二成分系と同様にセンサードメインが二量体構造を形成することを明らかにした。次に、種々のクロロエテン類化合物を添加したときトリプトファン側鎖に由来する340nmの蛍光強度変化を測定したところ、クロロエテン類化合物の添加量の応じた蛍光強度変化が観察されたが、化合物の種類による有為な差異は観測されなかった。このことからDET301はクロロエテン類に対する特異性の低いセンサータンパク質であると考えられる。また、新たにビニルクロライドを特異的に分解することがわかっているDehalococcoides属BAV1株由来脱塩素化酵素遺伝子bvcA上流に存在するSHK (BAV-SHK)をクローニングし、発現系を構築した。BAV-SHKも同様にセンサードメインとヒスチジンセンサーキナーゼドメインに分けて可溶性の組換え体発現系を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
センサードメインの発現系を構築し、クロロエテン類の添加による構造変化を利用したクロロエテン類検出系を確立した。これにより、リガンド結合によるアッセイ系を確立することに成功した。平成23年度の研究計画では結晶構造解析を行うよていであったが、これに関しては昨年3月の大震災の影響と計画停電や夏の節電のために、結晶作製に必要な環境の準備に遅れが生じ、達成できなかった。しかし、現在、結晶化を進めており、平成24年度に行えるものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は以下の方針で研究を推進する。1)SHKの生化学的特性の解明 平成23年度に作製したSHKセンサードメインとヒスチジンキナーゼドメイン組換え体タンパク質の生化学的特性の解析を継続して行う。センサードメインに関しては、昨年度構築した方法で、各クロロエテン類に対する親和性の定量を行う。キナーゼドメインに関しては触媒活性を調べる。さらに、センサードメインとキナーゼドメインの相互作用を解析する。方法は電気泳動、ゲル濾過、光散乱または等温滴定カロリーメトリー等を利用する。2)クロロエテン類センサーキナーゼの結晶構造解析とシグナル伝達機構解析 作製した組換え体タンパク質の結晶化を行い、立体構造を決定する。既に明らかにされているSHKの構造情報を参考にして、得られた構造データからSHKのシグナル伝達機構の反応モデルを構築する。3)クロロエテン類SHKと大腸菌由来SHKのキメラタンパク質の発現と生化学的特性の解明 クロロエテン類SHKのセンサードメインと大腸菌由来SHKヒスチジンキナーゼドメインの融合タンパク質を作製する。融合させる大腸菌由来SHKとしては、研究の進んでいるTar化学受容体を第一候補として用いる。クロロエテン類SHKの構造情報と過去の研究例を参考にキメラタンパク質を設計し、PCRによって発現プラスミドを作製する。得られたタンパク質を大腸菌で発現させ、クロロエテン類刺激によるヒスチジンキナーゼ活性の誘導を調べる。4)クロロエテン類センサーの開発 3)で用いた大腸菌由来SHKに対応するRR遺伝子をクローニングし、大腸菌での組換え体発現系を構築する。また、対応するRR認識配列の下流にレポーター遺伝子としてGFPまたはホタル由来ルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだプラスミドを作製し、キメラタンパク質発現プラスミド、RR発現プラスミドとともに大腸菌に導入する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度はセンサードメインおよびキナーゼドメインの生化学的解析に必要な試薬、消耗品等を購入する。また、得られた組換え体タンパク質の結晶化に必要な器具、試薬、消耗品を購入する。そのため、物品購入費として1,000千円を計上する。大型の器具や測定装置は既に所有しているものを利用可能なので、本予算では購入しない。また、筑波にある大型放射光施設でのX線回折強度データ収集のために必要な旅費150千円を計上する。さらに、得られた成果を論文として報告するために必要な英文校閲、論文投稿費として合計150千円を計上する。
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