2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23651119
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 徹哉 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (20162448)
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Keywords | ハイパーサーミア / 自然共鳴損失 / 超強磁性 / 微粒子クラスター / 軟磁性 |
Research Abstract |
磁性微粒子ハイパーサーミアは交流磁場中における磁気微粒子の発熱現象を利用した癌の治療法である。磁性微粒子ハイパーサーミアを実現する上で、磁性微粒子の癌組織への集積度の向上が課題である。集積度を上昇させると磁性微粒子間に磁気双極子相互作用が顕著に働き、個々の微粒子の発熱とは異なる挙動が生じるが、この状況下での発熱現象には不明な点が多い。一方、双極子相互作用が強い強磁性微粒子集合体では、保磁力の非常に小さな軟磁性的挙動を示す超強磁性への転移が発現するものと考えられている。この場合、ハイパーサーミアで支配的な発熱機構である緩和損失に加えて自然共鳴損失の寄与が期待される。この機構では、発熱効率が微粒子粒径に依存せず、蓄積した粒子全体が発熱に寄与すると考えられ、ハイパーサーミアの高効率化実現の可能性がある。本研究では、磁気双極子相互作用が強い磁性微粒子の発熱機構を明らかにするために、Fe微粒子を用いた磁性微粒子クラスターを作製し、その磁気特性と発熱特性を調べた。その結果、作成した微粒子クラスターでは十分な軟磁性的挙動が観測されず、ハイパーサーミアで用いられるラジオ波領域の周波数帯では自然共鳴損失を観測することはできなかった。これはFe微粒子の酸化により双極子相互作用が減少したことに原因があり、酸化を十分に防いだFe微粒子を利用できるならば、自然共鳴損失の観測も可能になると考えられる。一方、微粒子クラスターでは1粒子あたりの発熱量は孤立微粒子と比較して減少するものの、微粒子集積度の差を考慮すると、微粒子クラスターの利用は全発熱量を上昇させる上で有効であることが分かった。また、両者の発熱量の周波数依存性には差が見られ、その特徴は相互作用を有効磁気異方性として取り入れた緩和損失機構で説明できることが分かった。
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