2011 Fiscal Year Research-status Report
微生物のマイクロマシン利用のための作業用具及び装着技術の開発
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23651141
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
伊東 明俊 東京電機大学, 工学部, 教授 (50211743)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | マイクロマシン / メカノバイオフュージョンシステム / 微生物 / 行動制御 |
Research Abstract |
最初に,ワッシャ状作業用具について,なぜその装着が困難なのか,問題点を究明した.その結果,生理活性を保った状態でワッシャ内に挟んでおけるワッシャ寸法が,極めて狭い範囲にしかなく,ワッシャの縁を丸めても,適正寸法が小さくなるだけで,適正寸法範囲は狭いままであった.すなわち,狭い穴にゾウリムシを挿入することで物理的に作業用具を装着することが極めて困難であることがわかってきた.次に,ワッシャ状作業用具に変え,ヒモを構成素材とした作業用具の構成を検討した.材質としては,水中での比重が水に近く,細い繊維に加工しやすい,ポリプロピレンを用いた.このヒモをゾウリムシに縛り付ける形で,作業用具を検討した.装着法であるが,先ずマイクロピペットにゾウリムシ入り溶液を吸い込んでおき,ピペットに正圧をかけて溶液をピペットから出していくと,ゾウリムシがピペットから前向きに出てくる.これをちょうどピペット先端に達した時点で圧を止め,ゾウリムシをピペット先端に固定する.この状態にセットしてから,手作業でゾウリムシにひもを巻き付け,結び目を作り縛るものである.縛った後にヒモの両端を切断する.この方法で,ひも状作業用具を装着したゾウリムシが遊泳可能であること,電場を印加することで行動制御が可能であることを,それぞれ実験的に確認したが,ワッシャ状作業用具と同様,その装着は困難を極めた.物理的な装着法という点では,この作業用具はワッシャ状作業用具と変わりない.そこで,複雑にひもを結ぶことで,前方にストッパとしての轡状のひもをつけたり,さらに複雑に檻のような構造を作ったりしてゾウリムシに装着したが,やはり現時点では,装着に長い時間がかかる点,作業用具が重すぎ,さらにバランスよく作製することが困難である点など,問題が多かった.やはり,今後は化学的接着による装着を検討していくべきであるという結論が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時に予定していた実験は,一通り行うことができ,計画自体は順調に進んでいるが,物理的な方法でゾウリムシに作業用具を装着することは,やはり極めて困難な作業で,今年度開発した作業用具をあと2年間研究を進めれば実現できるかというと,現状では困難と言わざるを得ない.作業用具の作り方に大きな革新と取り入れる必要がある事が分かった.
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Strategy for Future Research Activity |
以上の経緯を踏まえ,今年度は,小型甲殻類のオオミジンコの外殻に接着することで作業用具を製作する研究を行う.ミジンコ類は,強い光走性を持ち,光によって行動制御が可能であり,制御特性がゾウリムシなどと比較して格段によい.さらに,ミジンコの甲殻に接着することで髪の毛や繊維を固定する手法が,生物学において,触手の運動や刺激に対する個体の反応を調べる際の実験手法として確立されている.オオミジンコ(Daphnia magna)の場合は,一瞬水中から取り出し,空気中で,シアノアクリレート系瞬間接着剤により固定することが可能である.この装着作業も,作業者のある程度の熟練を要するが,ゾウリムシにおいて試みているような物理的な装着法に比べ,遙かに簡単である.また,サイズが大きいため検証も容易である. そこで,様々な微細構造を作製し,ミジンコに接着することでマイクロマニピュレーション作業の効率を向上させることを検討する.具体的には,ブルドーザーのバケット様の作業用具,針,注射器などを開発予定である. オオミジンコのサイズでは,マイクロマシンとは言い難いが,ミジンコの類には,体長0.3mmのマルミジンコ(Chidorus spaericus)がおり,その幼生(体長0.1mm以下)の利用まで考えると,ゾウリムシよりも小さなミジンコを利用可能である.これら微小なミジンコ類も,大型のミジンコ類と同様に行動制御可能であることを確認済みである.しかしながら,マルミジンコ用の小型サイズは切削方式では作業用具の製作が困難であり,装着も遙かに難しくなる.よって今年度については,オオミジンコで,作業用具としての要件を把握した上で,小型のミジンコ類への適用について検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も,今年度同様,微生物培養,装置開発などの消耗物品に,全額を使用させていただく予定である.
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Research Products
(1 results)