2012 Fiscal Year Research-status Report
微生物のマイクロマシン利用のための作業用具及び装着技術の開発
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23651141
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
伊東 明俊 東京電機大学, 工学部, 教授 (50211743)
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Keywords | マイクロマシン / メカノバイオフュージョンシステム / 微生物 / 行動制御 |
Research Abstract |
本年度は,外骨格を持つミジンコの殻に化学接着する方法で作業用具を取り付け,利用する方法について検討した. 先ず,ミジンコの背中に,短冊状の矩形に切った撥水性のプラスティック薄板(以下その機能から浮き羽根と称する)を長手方向が横方向になるように貼り付け,表面張力によりミジンコを水面直下に固定する作業用具を考案した.作業用具の取り付け方法として,V溝を切った溝に水を注入しておき,そのミジンコを溝に置き,水面上に出たミジンコの背中の水分を綿棒で拭き取ることで,物質を背中に接着する方法を開発した.この方法を用いて浮き羽根を取り付けたミジンコは,つけていないミジンコよりも高効率で物体を運搬できることを実験的に示した. そこで,作業用具により,微生物単体では実現不可能な作業を実現することを次に目指した.具体的には,ミジンコに針を装着して,その針により,プラスティック膜製の風船を破壊させることにした.当初は,ミジンコの背中に,鍼灸治療用のステンレス針を直接接着し,風船の破壊を試みたが,この状態では上部に重量物をつけた形になるため,ミジンコは自在に水中を遊泳できなかった.そこで,上述の浮き羽根と組み合わせることにし,浮き羽根をミジンコに接着した上で,ステンレス針をその上に接着した.この状態では,水面直下に高さ方向の自由度を固定された形ではあるが,ミジンコは針を装着した状態で,自由に遊泳することができた.しかしながら,この状態では,風船の近くまではミジンコを誘導することが簡単にできたが,風船に針の先端を当てることができなかった.原因は,風船近傍の水面が表面張力により上に曲がっているためである.そこで,針の先端を曲げて水中に入れることで,手動制御したミジンコにより風船を破壊することに成功した.これは,生きたマイクロマシンを考える上で,微生物にできない作業を実現させた,大きな成果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度,行動制御したミジンコにより風船を破壊するというミジンコ単体では絶対にできない作業を実現したことは,「生きたマイクロマシン」として微生物を利用しようという,筆者らの研究における大きな一歩であり,ここを突破できたことは大きな一歩であると革新している.当初の予定では,より小型のミジンコについての可能性や,ゾウリムシに対する化学接着の可能性などを調べたいと考えていたが,この成果を踏まえて,本申請研究では,オオミジンコと作業用具についての研究を徹底的に行い,小型ミジンコやゾウリムシについての検討は,その後の研究に回した方が良いのではないかと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,オオミジンコ単体に対する行動制御プログラムを発展させ,オオミジンコをマイクロマニピュレータとして用い,搬送物体を指定経路に沿って自動搬送させる研究を行いたい.これについて,オオミジンコ単体と,羽状作業用具をつけたオオミジンコの搬送時間や搬送効率を比較し,作業用具の有効性を結果から示していきたい. また,将来的な医学への応用を目指し,さらに複雑な,注射器などの微生物用作業用具についても開発を試みたい. さらに,水面直下に固定する方法ではなく,水中で自在に遊泳しながら使用可能な作業用具についても,開発を進めたいと考えている.それに関連した,垂直面方向の行動制御手法の開発も,検討しなければならない課題である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も,今年度同様,微生物培養,装置開発などの消耗物品に,全額を使用させていただく予定である.
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Research Products
(4 results)