2012 Fiscal Year Research-status Report
化合物半導体1次元ブラウンラチェットによる超低エネルギー電子輸送の検討
Project/Area Number |
23651143
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
葛西 誠也 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (30312383)
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Keywords | ブラウンラチェット / 1次元 / 化合物半導体 / 低エネルギー / 電子輸送 |
Research Abstract |
無秩序に振る舞う電子集団からコヒーレントな電子の流れを引き出す電子ブラウンラチェットは、生体機能に倣った有用な素子であり、将来のエレクトロニクスの低消費電力化において極めて重要な役割を果たすことが期待されている。本研究の目的は、雑音やゆらぎを活用した超低エネルギー電子輸送を目指し、化合物半導体ナノワイヤチャネルに非対称ゲートを周期的に設けた電子ブラウンラチェット素子を実現し、コヒーレント電子輸送の実験実証、その評価検討を通して室温動作の指針を得ることである。平成24年度の実績は次の通りである。 (1)20組の多重非対称ゲートを有するGaAsナノワイヤ素子を試作した。これを用いブラウンラチェット動作の一つであるフラッシングラチェット動作を室温にて成功した。半導体フラッシングラチェットの室温動作は世界初の成果である。生成された直流電流はフラッシング周波数に依存しており、明らかに非線形整流作用ではない。ポテンシャル周期や電子密度より理論的に生成電流を導いて実験的評価ととの比較検討を行い、実験的に得られた結果がフラッシングラチェット機構に基づくものであることを示した。 (2)次いで、上記素子を用いてランダムパルス列を用いたフラッシングを行い、室温にてコヒーレント電流の生成に成功した。ランダム信号を用いたフラッシング電流の実験的観測も世界初である。フラッシング動作においては信号の周期性が生成電流の大きさに反映されることを実験的に指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
試作した多重非対称ゲートGaAsナノワイヤ素子をもちいてブラウンラチェット動作の一つであるフラッシングラチェット動作に室温にて成功した。半導体素子による室温におけるブラウンラチェット動作は世界初である。生成直流電流のフラッシング周波数依存性などの実験的評価と理論との比較により、得られた結果がフラッシングラチェット動作が実現していることを示した。また、ランダムパルスフラッシングによるコヒーレント電流生成も実現した。
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Strategy for Future Research Activity |
試作した多重非対称ゲートGaAsナノワイヤ素子をもちい、非対称ポテンシャルをON/OFFするフラッシング信号の波形や周期性と生成コーヒレント電流の相関を明らかにする。また、生成電流の増大を目指し、素子構造の最適化を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経費節減により生じた未使用額については次年度の実験部品の購入に充てる。 主に電気的評価に必要な電子部品の購入、成果発表のための参加費・旅費に充てる。
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Research Products
(18 results)