2011 Fiscal Year Research-status Report
純スピン流の局所注入による多ビット情報書込み技術の創出
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23651150
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木村 崇 九州大学, 稲盛フロンティア研究センター, 教授 (80360535)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | スピントロニクス |
Research Abstract |
本研究の目的は、強磁性体をサブミクロンサイズに加工して人工的に創出した多磁区構造に、電気の流れを伴わない純スピン流を局所的に注入することで、一部の磁区構造のみを選択的かつ低消費電力で反転させる書き込み技術を開発することである。本技術の開発により、従来の制御法では実現不可能な新奇多磁区構造が得られると共に、単一のナノ磁性体中に複数の情報を書込・記憶させる(多ビット化)することで、限界が近づきつつある磁気記録密度にブレークスルーを引き起こすと期待される。初年度である今年度は、代表者が所有している高分解能な磁気力顕微鏡を用いて、局所スピン流注入下のナノ磁性体の磁区構造変化を調べるために、電流導入端子を内蔵した磁気力顕微鏡システムの構築を行った。これまで、孤立したナノ磁性体の磁気力顕微鏡による磁区構造の観察はよく行っていたが、デバイス化されて複数の構造が付加したナノ磁性体では、さまざまな形状の変化が微小な磁区構造の変化を観察するのを妨げることが判明した。さらに、磁区構造観察にもっとも重要な磁性体コート探針が、デバイスを観察することで、すぐに劣化してしまう等の問題があり、磁区構造制御の確認において、磁気力顕微鏡以外に電気的検出法も適用すべきであると考え、そちらの研究も行った。その結果、電気的検出方法において、多磁区構造の変化に対応した電気信号変化を観測することにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デバイスの作製技術に関しては、電子線描画装置の徹底的な条件の見直しや、電極材料の高品質化を実施することで、当初の予想以上の精度と性能を持つデバイスの作製に成功しており、極めて順調な立ち上がりであった。一方で、デバイスの評価に関しては、当初、磁気力顕微鏡による磁区構造観察を用いていたため、前述の問題もあり、評価に少し時間的な遅延が生じたように感じたが、電気的検出法を組み合わせた手法の開発に成功したことで進捗状況が回復し、当初の計画通りに研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
主に電気的検出法を用いて、局所純スピン流注入による安定した磁区構造制御をおこなう。さらに、デバイスの高性能化実現に向けて、多端子スピン生成による超巨大スピン流の創出、高速スピン流注入による書込み動作の低消費電力化、高スピン偏極材料による純スピン流の高効率生成 の3つの要素技術の開発を行い、最終的にすべての技術を結集させ、書込み技術の高性能化を実現する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費の主は、実験用消耗品(有機溶剤、電子線レジスト、手袋等)や高圧ガス、寒剤であり、国内の学術会議出席用の旅費の計上も予定している。
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