2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23651174
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
河田 恵昭 関西大学, 社会安全学部, 教授 (10027295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 智幸 関西大学, 社会安全学部, 教授 (40261599)
山本 浩司 (財)地域地盤環境研究所, 地盤情報グループ, 主席研究員 (70450905)
鈴木 進吾 京都大学, 防災研究所, 助教 (30443568)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 津波 / 考古学 / 海洋科学 / 水工水理学 / 防災 |
Research Abstract |
大阪湾、大阪平野の古地形の復元(略称:地形復元研究)については、大阪府全域にある約22,000本のボーリング・データと大阪湾の約4,300本のボーリング・データを用いて、縄文海進時代を含む、過去約1万年間の海底地形を千年単位で復元した。これには、関西圏地盤情報データベース(GI-base)を活用し、GIS上で3次元の数値地図として"見える化"を実現した。実際の作業としては、約2万年前の最終氷期最盛期以降に堆積した地層の柱状図から、これまでに14C年代測定から判明した地層厚を参照して、平均堆積速度を推定し、任意の年代の標高を推定できるシステムのプロトタイプを完成した。 つぎに、歴史津波シミュレーションの実施(略称:歴史津波シミュレーション研究)については、約2万年前から9,000年前の古大阪平野から古河内平野の時代の大阪湾沖積層基底面深度図から当時の海底地形を復元し、地震マグニチュード8.4から9.0の南海地震による津波の来襲特性を数値シミュレーションによって明らかにすることを試みた。この検討中に、九州の大分県竜神池や四国の沿岸各地で津波堆積物が発見され、その解析結果から、過去3500年間で8回の巨大津波が発生したことなどが明らかにされたので、新しい断層モデルの提示を待って、数値計算することにした。その間、徳島県が実施した地震マグニチュード9.0の計算結果から得られる津波の沿岸波高分布から、従来の研究代表者による検討結果である「南海地震のマグニチュードが2倍になると津波の高さは約1.3倍になる」という関係が成立することが確認された。この事実は、本研究における津波外力の設定の2段階、すなわち、レベル1とレベル2の採用が必須であることを示していることを明らかにした。また、地震断層の各セグメントの時間差の影響を検討する必要性があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル化は比較的順調に進んでいるが、南海トラフ巨大地震に関する政府の検討部会のモデル化が2012年6月末に終了予定であり、それを待って本研究の南海地震の波源モデルの確定を行う予定であり、所定の研究成果を得られると確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
大阪平野の地形復元研究では、得られた各年代の海底地形データの整合性を、大阪府文化財センターと大阪文化財研究所が所蔵する遺跡発掘調査結果を用いて検討して、より精度の高い海底地形を復元する。さらに、歴史津波シミュレーション研究では、各千年単位での海面変動量を与えて、海底地形図を復元した結果に対して、新しい波源モデルによる南海地震の津波シミュレーションを実施して、海底地形の変化による津波特性の変化が激変する地域を抽出し、そこでは、流体力学的な観点からどのような破壊が起こりえるのかについて考察する。さらに、最終的にシミュレーション結果をCG化できるようにして、大阪湾・大阪平野周辺での地形変化に及ぼす津波の影響を理解できるようにする。また、遺跡存在可能性研究では、残存する沿岸部や低地部の縄文・弥生遺跡がそこに来襲する津波外力のもとで残存する可能性があったことを実証する。これによって、縄文・弥生遺跡の残存は、とくに津波によって大きく支配されるという事実を明らかにする。 さらに、ここで開発した解析手法を標準化して、津波考古学の創成に寄与する。とくに、研究成果をCG化するとともに、大阪湾と大阪平野のジオラマを作成して、阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センターや大阪府高潮・津波ステーションなどで展示して、南海地震津波災害の啓発活動に貢献する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費総額の半額程度を旅費と謝金に充当する予定である。なお、繰越金300,555円は、東日本大震災関係の研究推進において、他の研究費での支弁可能なものについて執行をやめて新年度に支弁することにしたため発生したものであるので、新年度研究費に充当する。
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