2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23651174
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
河田 恵昭 関西大学, 社会安全学部, 教授 (10027295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 智幸 関西大学, 社会安全学部, 教授 (40261599)
山本 浩司 一般財団法人地域地盤環境研究所, 地盤情報グループ, 主任研究員 (70450905)
鈴木 進吾 京都大学, 防災研究所, 助教 (30443568)
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Keywords | 津波 / 考古学 / 海洋科学 / 水工水理学 / 防災 / 縄文遺跡 / 縄文海進 / 南海トラフ巨大地震 |
Research Abstract |
南海トラフ巨大地震のモデルが提示されたので、それを用いて津波の数値計算を実施した。そこでは、精度の高い海底地形を復元する必要がある。そこで、入手した大阪湾の海底と沿岸部付近のボーリングデータを精査し、それらを用いて過去の海底地形を復元することに成功した。とくに今年度は、大阪湾の最奥部付近でどのような挙動となるのかを明らかにした。その結果、以下のことが明らかになった。(1)現在から1万1千年前から6千年前までの津波をシミュレートするための海底地形モデルを、大阪湾について構築した。この地形モデルについては、一般に利用されるために公開する予定である。(2)1万1千年前から6千年前までの千年間隔の各時代における南海トラフの地震津波のシミュレーションを、現在中央防災会議で想定されている2モデルについて実施し、それぞれで津波外力データを得た。各時代における津波の最大津波高分布を比較すると、(3)現在の大阪市の北側から西の尼崎市・西宮市の地域において津波高が高くなる傾向を示した。これは、当地域は1万年前は大阪湾の湾奥部にあたり、6千年前は大阪湾から河内湾への狭窄水路になるためであると考えられ、縄文時代に特に津波の影響を受けていた地域であると考えられた。(4)8千年前の地形になると、津波高が高い地域は内陸側へ移動し、狭窄部であった現在の大阪駅など大阪中心部で大きかったことが分かる。(5)6千年前には、上町台地によって大阪湾と河内湾が別れ、上町台地前面の大阪湾側で津波が大きくなるとともに、河内湾に侵入した津波が湾の北東および南岸で大きくなったという特性を示した。これらの成果は、来襲した津波によって海岸付近の縄文遺跡や貝塚などが流失する可能性を定量的に検討できるものであり、最終年度に向かってその検討を実施できる目処がついたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
政府から南海トラフ巨大地震のモデルが2012年3月末に公表され、それをインプットして計算を遂行してきた。海底地形モデル化も基本的に終わっており、最終年度は計算だけでなく、計算結果と実際の縄文遺跡の西日本沿岸域分布などとの比較検討が可能となっており、本研究によって示された成果に基づいて、津波考古学の方向性が確立することが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
津波堆積物に関する調査が別途進んでおり、過去5000年間に来襲した巨大南海地震津波の数が15回と同定されたので、それぞれの推定来襲時期の南海地震の数値計算を実施して、どこまで遡上したかを定量的に明らかにし、現存する縄文遺跡との関係を実証的に明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究は当初計画より早く進展しているので、平成24年度の1月以降に、既存の縄文遺跡の海抜高度を全国的に調査する作業の一部を開始する予定であり、その経費の一部を計上していた。しかし、数値計算用の海底地形の復元に時間を要したので、その作業が不可能となったため繰越金が生じた。この繰越金は、その他:海抜高度データー整理費用として使用する予定である。
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