2012 Fiscal Year Research-status Report
ゲノムにおける高頻度組換え部位の形成基盤:新視点からの解析
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23651185
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大山 隆 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60268513)
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Keywords | 減数分裂期組換え / 高頻度組換え部位 / DSBホットスポット / 出芽酵母ゲノム / マウスゲノム |
Research Abstract |
減数分裂期組換えにおいては高頻度組換え部位が形成されるが、そのような部位に共通する塩基配列はこれまで見出されていない。そこで本研究では、ゲノムワイドの解析が行われている出芽酵母やマウスの高頻度組換え部位を対象として、DNAの物理的特性の解析をはじめとした各種の解析を行い、クロマチン内の特定の領域に組換え部位が形成される分子的背景を明らかにすることを目的としている。 前年度は、出芽酵母で明らかにされたDSB(二本鎖切断部位)のホットスポット3,604箇所(Pan et al.: Cell 144, 719-731, 2011)、およびそれらの周辺領域を対象として、柔軟特性の解析と高次構造の解析を行い、DSBホットスポットには極めて硬い特性を持つDNA配列が、他の領域に比べて多く含まれていることを示唆する結果を得た。一方、高次構造については、明確な結論を得ることができなかった。平成24年度は、出芽酵母のDSBホットスポットを対象として、まず高次構造の解析を集中的に行った。その結果、当該部位にはゲノム上の他の部位と対比できるような高次構造上の特徴はないという結論に至った。さらに、平成24年度は、マウスにおけるDSBホットスポット9,874箇所(Smagulova et al.: Nature 472, 375-378, 2011)のすべてについて柔軟特性の解析を行った。興味深いことに、全プロファイルから求めた平均のプロファイルは出芽酵母のそれとは逆に、当該部位が極めて柔らかい特性をもつことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画から見るとやや遅れ気味ではあるが、研究成果自体は着実に出ている。その理由として、以下の二つの成果を挙げることが出来る。第一に、出芽酵母とマウスのそれぞれの全DSBホットスポットの柔軟特性を解明し、両生物のDSBの平均的柔軟特性プロファイルを解明した。第二に、出芽酵母のDSBの平均的柔軟特性プロファイルが極めて硬い特性を示すのに対してマウスのDSBの平均的柔軟特性プロファイルが極めて柔らかい特性を示すことを見いだした。当該研究は、高頻度組換え部位形成のDNA基盤(塩基配列を除く)を解明することを目的としていることから、上記の成果は、着実な成果といえる。しかし一方、現状はまだ平均像としての特徴を捉えたという段階である。上記の特徴を示さないDSBホットスポットも多い。このようなDSBホットスポットが他にどのような特徴を有するかを解明する研究が残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、平均的柔軟特性プロファイルから逸脱した特性をもつ出芽酵母DSBホットスポットおよび同様のマウスDSBホットスポットがどのような共通の特徴をもつのかを明らかにする。具体的には、延長した研究期間内に二本鎖DNAの安定性やタンパク質による変形能の解析を“ドライ”と“ウェット”の両面で進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
コンピュータの増設や実験用消耗品(分子生物学試薬、生化学試薬など)などに使用するとともに、海外国際学会での成果発表・情報収集などの旅費として使用する。
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Research Products
(4 results)