2011 Fiscal Year Research-status Report
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23651209
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
GOTO DEREK 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (40419205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 玉緒 上智大学, 理工学部, 准教授 (30281843)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 寄生性センチュウ / 細胞性粘菌 / 生物相互作用 / 化学生態学 |
Research Abstract |
具体的内容:研究目的は我が国が寄生性線虫に対する農薬の使用量が世界中で最も多いという現状に鑑み、環境保全の観点から減農薬線虫防体系の確立を視野に入れて、土壌微生物の持つ潜在的な能力を開発することにある。そのためにまず、非寄生性線虫ないしは寄生性線虫と細胞性粘菌を用いて、線虫に対する忌避・誘引活性を評価するバイオアッセイ系を確立した。確立したバイオアッセイ法により、細胞性粘菌は寄生性線虫に対して特異的な忌避活性を持っていることを明らかにした。さらにその忌避活性を細胞性粘菌から抽出することに成功した。従って、この忌避活性は細胞性粘菌から放出される化学物質によって担われていることを明らかにすることができた。意義・重要性:同じ土壌環境に生息しながら、これまで全く解析がなされていなかった寄生性線虫と細胞性粘菌の間でなされるコミュニケーションを解析するための第一歩として、コミュニケーションを数値化するバイオアッセイ法を開発した。つまり本アッセイ系を用いることによって誘引ないしは忌避あるいは無関係であることを数値化することができる溶になった。また、本バイオアッセイ法に基づいて細胞性粘菌から忌避活性を抽出できたことから、この忌避活性は細胞性粘菌が存在することによる物理的な阻害効果や水分・二酸化炭素などの一般的な条件の変動によるものではなく、細胞性粘菌が分泌する化学物質によるものであることが確認された。以上の結果は今後、微生物由来の天然型化合物による新たな線虫防体系の確立に寄与するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の目的は環境問題の解決・改善を視野にいれ、土壌微生物の持つ潜在的な能力を開発することにある。そのため細胞性粘菌の化学生態学的な解析を基礎として抗線虫活性のある有用物質を検索し、将来的には微生物農薬の開発へとつなげることを目的とした。これまでの研究によって、有用化合物を探し出すために必要なバイオアッセイ系を確立した。さらにこの活性が一般的物理的な障害によるものではなく、細胞性粘菌が放出する化学物質によって担われていることを証明した。以上の結果から、当該年度に目標としていた研究計画をほぼ予定通りすすめることができたと考えている。特に細胞性粘菌由来の抗線虫活性を抽出できたことは大きな成果であり、予想を上回る研究の進展であったため、次年度以降は化学物質の検索を中心に研究を推進したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、細胞性粘菌由来の抗線虫活性を抽出できたことは大きな成果であり、当初の予想を上回る研究の進展であった。そこで今後は活性物質の探索を進めるため生化学的な解析を中心として研究をすすめたいと考えている。また、齊藤研究室には既に細胞性粘菌で、いくつかの二次代謝産物の生合成経路に欠陥のある遺伝子破壊株がある。これらの株を用いて、確立した方法に従って活性抽出を行い、もし抽出画分に活性がみられなければ、破壊した遺伝子の産物が抗線虫活性を担うものと考えられる。これらの方法を併用して活性物質とその生合成経路の解明に向けた研究を進める。Goto研究室ではバイオアッセイ系をさらに改良し、多検体を同時に、かつ短時間にアッセイできるようなシステムの確立にむけた研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は細胞性粘菌が示す寄生性線虫にたいする忌避活性を抽出することに成功したので、この活性は細胞性粘菌が分泌する化学物質によるものであることが明らかになった。そこで平成24年度はこの活性を担う物質の同定を中心に解析をすすめる。前年度に引き続き細胞性粘菌に関する研究は上智大学齊藤研究室で行い、線虫に関する研究は北海道大学Goto研究室で行う。そのためマテリアルを上智大学で準備して、北海道大学へ移動して活性測定実験を行う必要がある。従って、昨年度に引き続き本年度も研究旅費を中心として研究費を使用したい。さらに本年度は生化学的解析や分子生物学的解析をいっそう推進するため、これらに関わる消耗品を購入する予定である。また,平成23年度未使用額については,平成23年度に購入した試薬の支払に使用する。
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Research Products
(3 results)