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2012 Fiscal Year Research-status Report

古代ギリシアの礼拝像の研究――「古き像」と「新しき像」の神性

Research Project

Project/Area Number 23652018
Research InstitutionTohoku University

Principal Investigator

芳賀 京子  東北大学, 文学研究科, 准教授 (80421840)

Keywords美術史 / 西洋古典 / 考古学 / 宗教学
Research Abstract

本研究はギリシア彫刻の神像を美術品としてではなく、信仰が生きていた多神教世界の古代ギリシア人の目から見た宗教物として考察する。とりわけ、礼拝や儀式の対象となる「礼拝像」と呼ばれる神像に焦点を当て、それを木製の「古き像」と、前6世紀以降に大理石などの素材でつくられた「新しき像」に2分し、古代ギリシアの人々が礼拝像に認めた神性がどのようなものだったのかを明らかにすることを目的とする。
「新しき像」の中でも、アテネ近郊ラムヌスのネメシス神殿の礼拝像は、断片的とはいえオリジナルが残り、古代文献中にも詳細な記述が残る唯一の作品である。そこで平成24年度には、平成24度2月にラムヌスでおこなった現地調査の成果を整理し、考察を進めた。また平成24年10月にはロンドン、大英博物館が所蔵するこの礼拝像の頭部に残る金属製冠の接合跡を調査した。さらに平成25年2月には、ネメシス像のローマ時代のコピーをアテネのアゴラ博物館とコペンハーゲンのニュー・カールスベア・グリプトテークで現地調査した。
その結果、パラディオンやアテナ・ポリアスといった「古き像」が都市の中心にあって都市を守護するタリスマン的な神像であるのに対し、このネメシス像がアテナイという都市国家の周縁部を守る、鎮護の女神として機能していたことが判明した。
ネメシスは後世において復讐の女神として知られるようになるが、本来は不正を正し、運命を再分配する女神であった。ネメシス像本体がこの世界の両端を鎮護する強大な女神そのものの姿を表している一方で、その台座にはトロイア戦争後とペルシア戦争後という、女神がこの世界の秩序を回復した過去の歴史が表されているのである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究は、古代ギリシア世界において礼拝や儀式の対象となった「礼拝像」と呼ばれる神像に焦点を当て、彼らが「古き像」に何を求めたのか、「新しき像」に欠けているとされる神性を賦与するために、礼拝像の作者らがどのような工夫をこらしたのかを追求することを目的とする。
現存する礼拝像やそのローマ時代のコピーの調査は、ギリシア、イギリス、デンマークで順調に進めることができた。考察の面では、古き像の代表ともいえる《パラディオン》、《アテナ・ポリアス》、《アルテミス・エフェシア》、新しき像では《ラムヌスのアルテミス》や《アンティオキアのテュケ》などについて研究を進めてきたが、その結果、これらの像は「古き像」と「新しき像」という区分のほかに、都市の中心に位置してその創建の核となった神像と、都市国家の領域の拡大とともに生まれた都市周縁を守護する神像にわけられることが判明した。当初想定していた内容とは異なるが、これまでにない神像解釈の可能性が生まれた。

Strategy for Future Research Activity

都市の中心と周縁の守護という観点から、古代ギリシア世界の礼拝像研究を進める。最終年度である平成25年度には、今までの成果をまとめ、公表を進める。《ラムヌスのネメシス》に関しては、貴重な調査結果と独自の解釈が得られたため、6月の日本西洋古典学会大会で口頭発表し、論文執筆や出版も進める。そのほかの作品について得られた成果についても総合的な考察を加え、8月に空間史学研究会で発表。論文執筆も進める。
また平成25度中に海外から研究者を招聘し、講演会を開催して、古代ギリシアの礼拝像についての議論を活発化させる。その内容についても、なるべく早い時期に出版をめざす。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

研究成果をまとめ、考察を加えるためには、なおも文献や作品の調査が必要と思われる。また研究成果の公表のためには、参照作品の写真購入費(あるいは著作権費)などが必要である。
また海外からの研究者の招聘費が必要となる。

  • Research Products

    (4 results)

All 2013 Other

All Journal Article (2 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] 豊饒の角を持つヘラクレス2013

    • Author(s)
      芳賀京子
    • Journal Title

      美術史学

      Volume: 34 Pages: 61-78

  • [Journal Article] 西洋古代における死とその表象2013

    • Author(s)
      芳賀京子
    • Journal Title

      東北文化研究室紀要

      Volume: 54(別冊) Pages: 96-98

  • [Presentation] アゴラクリトス作《ラムヌスのネメシス》

    • Author(s)
      芳賀京子
    • Organizer
      日本西洋古典学会
    • Place of Presentation
      東京
  • [Presentation] 3D Analysis of Classical Sculpture

    • Author(s)
      Kyoko Sengoku-Haga
    • Organizer
      Internationalermuseumstag am LRZ
    • Place of Presentation
      ミュンヘン(ドイツ)

URL: 

Published: 2014-07-24  

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