2014 Fiscal Year Annual Research Report
古代ギリシアの礼拝像の研究――「古き像」と「新しき像」の神性
Project/Area Number |
23652018
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
芳賀 京子 東北大学, 文学研究科, 准教授 (80421840)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 美術史 / 西洋古典 / 考古学 / 宗教学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は古代ギリシアの神像を美術品としてではなく、多神教の信仰が生きていた時代の宗教物として考察する。とりわけ、礼拝や儀式の対象となる「礼拝像」と呼ばれる神像に焦点をあて、それを木彫の「古き像」と前6世紀以降に大理石などの素材で新しい技術をつかってつくられた「新しき像」に二分し、古代ギリシアの人々が礼拝像に認めた神性がどのようなものだったかを考察するものである。 前者の例としては「人の手にならない」と伝えられる《アテナ・ポリアス》や《サモスのヘラ》の他に、実際に青銅器時代の像が前8世紀になってから礼拝対象となったケア島アイア・イリニの例、トロイアからもたらされたという由来とともに地中海各地で祀られていた《パラディオン》、やはりギリシア外の由来が伝えられる《アルテミス・オルティア》などを扱い、ギリシア初期における神像崇拝と聖性のメカニズムを考察した。この成果に関しては現在、論文を執筆中である。 後者の例としては、巨匠フェイディアスの《アテナ・パルテノス》や《ゼウス・オリュンピオス》と、その弟子たちの手になる礼拝像を扱い、フェイディアスが「新しき像」にどのようにして聖性を賦与したのか、彼の弟子のアゴラクリトスやアルカメネスが師の手法を取り入れつついかにして礼拝像をつくりあげたのかを考察した。《ラムヌスのネメシス》に関しては日本語論文を既に出版したが、現在、英語版を執筆中である。また前5世紀後半のアテナイという都市国家を守護するために、ラムヌスとスーニオンとパレナの神域が果たした役割とそこにフェイディアスの弟子たちがどう関わったかを考察した。これは『空間史学叢書 』第3号(2016年出版予定)所収として出版される。
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Research Products
(1 results)