2012 Fiscal Year Annual Research Report
映画が辿るアルツハイマー型認知症の40年間 1973~2012年
Project/Area Number |
23652030
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
今泉 容子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (40151667)
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Keywords | 映画 / アルツハイマー / 患者 / 介護者 / 認知症 / 恍惚の人 / 老年学 / 高齢者 |
Research Abstract |
日本のアルツハイマー映画に着眼して、アルツハイマー映像表象史を構築することが、本研究の目的である。2年目の平成24年度には、前年度に日本映画に関して実践した「アルツハイマー患者と介護者」(高齢者と周囲の人)の関係分析を、外国映画へと広げていった。アルツハイマー映画制作がさかんな6カ国(米国、英国、カナダ、中国、韓国、インド)の映画を選択し、「アルツハイマー患者と介護者」の関係を明らかにしていった。 外国映画の場合、アルツハイマー映画の歴史と呼びうるものは、2000年代の10年間そこそこである。したがって、日本と外国のアルツハイマー表象の比較分析は、40年間(日本)と10年間(外国)の比較になるが、歴史の長短も比較要素のひとつとなった。外国映画におけるアルツハイマー型認知症の出現は、中国映画だけ例外的に1995年という早い時期に『女人、四十』によってスタートをきったが、それは日本人を母にもつアン・リー監督が日本の『恍惚の人』を模倣したものであった。ほかの国の映画におけるアルツハイマー表象も、日本映画が提示する多様な「患者と介護者」の関係のいずれかのパターンに当てはまることが明らかになった。日本映画のアルツハイマー表象は、グローバルな影響を与えてきたのである。 2年間で完了した本研究は、外国の例を頭におきながら、日本のアルツハイマー映像表象史を構築した。合計2篇の論文を研究成果として発表した。今後は、本研究の成果を基盤に、「老年学」に参与する方向へ進んでいく計画である。老年学は医学、生物学、社会学、福祉学、心理学などが協力し合った学際的研究領域であるが、「映画研究」はこれまで参与した実績がなかった。しかし、アルツハイマー型認知症は映画表象の考察を抜きにしては片手落ちと言えるほど、日本の映画関係者たちが意欲的に取り組んできた。本研究の成果をもって、老年学に参与していきたい。
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