2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23652038
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
小谷 充 島根大学, 教育学部, 准教授 (00283044)
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Keywords | デザイン / タイポグラフィ / 映像 / アニメーション |
Research Abstract |
本研究は,グラフィックデザイナー・羽良多平吉(1947-)がタイトルデザインを担当した劇場用アニメーション『銀河鉄道の夜』(1985年7月13日公開)を対象作品として,タイポグラフィの特質とそのコンセプトを考察し,「文字の視覚的伝達機能」を明らかにすることを目的としている。 具体的には,対象作品の静止画像からタイトルデザインや組版における客観的(数値的)データを抽出し,当時と同じ写真植字技術によって原版を再現する。その過程で明らかになる技法上の問題や選択の詳細を検証し,印刷媒体との比較をおこないながら,ビジュアルコンセプトや作品との関連性について考察をおこなった。 その結果,対象作品の分析から,次のような特質を見出すことができた。①混植を前提とした和文組版,②複数の欧文書体による画面構成,③精緻で極端な詰め組調整,④従属欧文の排除,⑤拗促音の小字,⑥罫線および記号類の使用。以上の特質は、写植期における邦画クレジットのなかでも極めて技巧的な事例であり、高度な写植技法のみならず、活版印刷にも精通するかのような組版状況から、紙媒体におけるタイポグラフィのノウハウが注入された精緻なデザインであると論じた。 さらに,それらの特質から羽良多平吉の担当した原案本の装丁に源泉があることを指摘し,その後の映画関連書籍に適用されていく組版手法が,さまざまなメディアに拡散する作品世界を同一の世界観で包み込む視覚記号として機能していたと結論づけた。
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