2011 Fiscal Year Research-status Report
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23652046
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
朴 美貞 国際日本文化研究センター, 研究部, 機関研究員 (50589992)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 植民地 / 博覧会 / 絵葉書 / 朝満ツーリズム / 伝統工芸 |
Research Abstract |
・京城における植民地都市の空間的特徴に関する調査に関しては、国際シンポジウム「万国博覧会とアジア―上海から上海へ、そしてその先へ」(2011年9月)で研究報告を行い、その内容を『東洋意識―夢想と現実のあいだ1894-1953』(稲賀繁美編、2012年4月)に掲載した。・朝鮮半島における日本人居留地形成と都市化に関する研究調査の一環として「近代アジアをめぐる絵ハガキ研究会」を主催し、「東洋美学・東洋的思惟を問う」共同研究会と共催で推進した。並行して、「朝鮮風俗絵葉書」に関する日文研内でのデジタル化・DB化に関する準備とその手続きを進めた。・朝鮮半島における日本人居留地の形成に関する調査の一環として朝鮮絵葉書を中心に、釜山・元山における日本人居留地の分析・検証を行い、その概略を情報誌「KOREA TODAY」に紹介した。・済州道に現地調査を行い、済州大学校の「海洋と環境研究所」「人文科学研究所」を訪問し、済州道における植民地期の水産漁業の展開と水産環境について専門家に意見聴取を行った。朝鮮半島における租借地・居留地の始まりが東アジアにおける海洋文化・水産開発と深いかかわりを持っていたため、20世紀初頭の朝鮮半島をめぐる日・露・朝・中と関わる鯨漁を中心とした研究調査を行い、国際集会「第二回中日韓朝言語文化比較研究国際シンポジウム」(延辺大学、同年8月)にて報告の傍ら、当地(トモン・延吉など)での調査を行った。・朝鮮博覧会と朝鮮伝統工芸に関する研究調査の一環で田邊孝次と朝鮮美術に関する調査を行い、ご遺族より遺稿を拝受した。遺稿はスキャン作業を終え、その一部をワードへの引き起こし作業と内容の検証・分析を行った。その結果を、日本比較文学会第47回関西大会シンポジウム「朝鮮半島の表象と日本社会-1920年から1930年代の美術を中心に」(同年11月)にて研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・朝鮮博覧会(1929年)の開催に際して、京城の都市空間の特質として、民族間居住空間の分離(segregation)(南村・日本人街)/北村・朝鮮人街)から、異民族間融和(統合)(integration)への変貌を試みる「植民地都市」の性格を究明した。なかでも、1922年の東京の上野で開かれた平和記念東京博覧会の文化村の「文化住宅」展示をはじめとする日本国内での「文化住宅」をめぐる様々な動きの朝鮮への波及と展開に関する諸相を探り、京城の都市空間形成にも大きく作用したことを解明した。朝鮮半島における各日本人居留地=植民地都市の全貌に関する調査・分析の際に、日本人街の様子を裏付ける歴史的資料として、当時発行された「地図・絵図・絵葉書」などの視覚媒体による検証作業の占める役割の重要性が確認できた。朝鮮半島における日本人居留地の形成以後、各居留地における都市化・産業化・近代化の中で「博覧会」などのイベントが果たした役割と、その全貌の解明が緊急課題であることを認識した。その際に、朝鮮半島における日本人の経済的活動に関する諸相、様々な「博覧会」などのイベントをめぐる人的・物的流動の実態、教育現場としての植民地への「見学」を含む「ツーリズム」の生成等々に関するさらなる調査・分析が必要不可欠である。朝鮮半島における租借地・居留地の始まりが20世紀初頭の朝鮮半島をめぐる日・露・朝・中の角逐の中で生成されたことを考慮する際に、東アジアにおける海洋文化・水産開発に関する諸相を解明すべき課題として、今後相互の共同研究や国際協議の中で取り上げるべきであると切実に認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
日本国内での「文化住宅」をめぐる動きの京城への伝播とそれをめぐる諸現象に関するより深い分析・検証作業が必要である。朝鮮における「文化住宅」運動の実態をはじめ、「文化住宅」運動の中で行われた朝鮮の伝統的住居空間に和洋折衷を取り入れた住宅改良に関する詳細、さらには「生活改善同盟会」の動向をめぐる調査が必要である。一方、居留地の都市空間形成と「博覧会」イベントとのかかわりを解明するため、日本人商工会議所の動向、日本人経済人・企業家の足跡を明らかにする必要がある。その際に、現地調査を基に、地図・絵図・絵葉書などの媒体と照合しながら分析を試みる。朝鮮半島における「植民地都市」の特質を解明しつつ、東アジアにおける人的・物的流動の実態をさぐる。その際に絵ハガキを媒体とする検証の重要性を高めながら、「絵ハガキ研究会」を推進する中で、「絵ハガキ」の媒体をめぐる研究の将来性をも模索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
絵ハガキなどの視覚媒体のデジタル化DB化のための機器(スキャナー)の購入。「絵ハガキ研究会」の継続にともなう参加者への旅費支出。研究会で議論された結果を論文報告書として刊行する。釜山・ソウルを中心に現地調査を行う。
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