2011 Fiscal Year Research-status Report
自伝に描かれた関東大震災の研究-関東大震災はいかに回想されたか-
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23652048
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
柴口 順一 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (00235566)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 自伝 / 回想 / 関東大震災 / 地震 / 表現 |
Research Abstract |
日本における自伝に関する全体的・総体的な研究を目標として、その方向性を模索するというのが本研究の基本的な課題である。すなわち、個別の自伝に関する研究、あるいはその単なる積み重ねといったことではなく、それぞれの自伝を横断的に捉える試みを行なうことによって、自伝の全体的・総体的な研究への方向性を探ることである。 その方法のひとつとして本研究で行なうのは、ある社会的な事件や出来事が、それぞれの自伝においてどのように捉えられ、また描かれているかを検討していくことである。その具体的な事件・出来事として関東大震災を取り上げる。本研究では、自伝における関東大震災関する記述を追い、その捉えられ方や描かれ方を検討する。 個々の自伝に関する個別の研究もむろん重要であり、その研究もまた大いに進めていく必要がある。しかし、自伝全体を見わたすような全体的・総体的な研究もまた是非とも必要である。これまでの研究において、個別の自伝研究が圧倒的に遅れていることはいうまでもないが、自伝の全体的・総体的な研究はまったくといってよいほどなされてこなかった。そのような研究への一つの試みとして、関東大震災という出来事がそれぞれの自伝においてどのように捉えられ、また描かれているかを横断的に捉えようというのが、本研究の最大の特色である。それは、自伝研究におけるはじめての試みであることはいうまでもない。 関東大震災に関する記述を追っていくことで、自伝における関東大震災の捉えられ方や描かれ方が明らかになるであろうことはいうまでもないが、それと同時に、単なる出来事としての関東大震災とはまたちがった様相が浮かび上がってくることも考えられる。そのことによって、出来事としての関東大震災に関する研究にも大いに資することがあろうと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づき、まずは研究対象となり得る自伝、すなわち関東大震災が描かれているであろう自伝のリストを作成することからはじめた。既存の自伝リストとしては最も詳細な『日本人の自伝 別巻II 日本人の自伝300選』(平凡社、1982.10)の「付録 書目一覧―三〇〇選のための手控え―」を基に、他の様々な資料を参照しながら、おおよそ年代的(時間的)に判断して、関東大震災が描かれている可能性のある自伝をピックアップした。 上記の要領で作成した自伝リストを基に収集作業を行ないながら、それぞれの自伝にあたり、目的の記述を探し出し分析していく。いつまでにどれくらいの量(冊数)の自伝を検討するのかといった予定表をあらかじめ作成し、それにしたがって行ない、修正が必要な場合は適宜予定表を変更しながら行なった。 初年度は、自伝リストの作成と収集作業にかなりの時間を要することが予想される。収集する自伝の多くは1冊1冊の発注となり、しかもかなりの部分は古書に頼らざるを得ないので、発注作業だけでも相当の時間が費やされることになるであろう。したがって、実際の自伝にあたり、分析していく仕事は次年度以降に比べ相対的に進行は遅くなると考えられ、23年度は80冊程度の検討を予想していた。 だが、予想以上に作業は進み、当初予定していた数を超える100冊あまりの自伝を検討することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に行なった研究を基に、24年度以降も同様の研究方法で、残された自伝についての研究を継続していくというのが基本的な計画である。 初年度は自伝リストの作成や収集にかなりの時間を要し、80冊前後の検討にとどまることを予想していたが、予定より多くの自伝を検討することができた。24年度、25年度はそれぞれ120冊程度を検討する予定である。 また、24年度には、作成した自伝リストの整備を行なっていく必要がある。様々な自伝に実際に目を通し、またその他の資料を参照していく過程で、新たなものが発見されることも少なからずあると考えられるからである。もちろん、誤り等の訂正といったこともあるであろう。 25年度は、予定している残りの自伝を検討することに加えて、検討した全自伝を検討した分析結果をまとめ、自伝に記された関東大震災に関する本研究の成果をまとめる作業に力を入れる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
自伝関係図書の購入費用(多くは古書店より)と、全国の自伝図書館等及びその他図書館等への調査研究旅費(古書店等での入手困難な図書、あるいは高額な図書等の調査)。
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