2013 Fiscal Year Annual Research Report
自伝に描かれた関東大震災の研究-関東大震災はいかに回想されたか-
Project/Area Number |
23652048
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
柴口 順一 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (00235566)
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Keywords | 自伝 / 回想 / 関東大震災 / 地震 / 表現 |
Research Abstract |
日本における自伝に関する全体的・総体的な研究を目標として、その方向性を模索するというのが本研究の基本的な課題であった。すなわち、個別の自伝に関する研究、あるいはその単なる積み重ねといったことではなく、それぞれの自伝を横断的に捉える試みを行なうことによって、自伝の全体的・総体的な研究への方向を探ることであった。 その方法の一つとして本研究で行なったのが、ある社会的な出来事(事件)がそれぞれの自伝においてどのように捉えられ、また描かれているかを検討していくことであった。その具体的な出来事(事件)として関東大震災を取り上げた。本研究では、自伝における関東大震災に関する記述を追い、その捉えられ方や描かれ方を検討した。 既存の自伝リストとしては最も詳細な『日本人の自伝 別巻II』(平凡社、1982年)所収の「付録 書目一覧」を基礎として、他の様々な資料を参照しながら作成した自伝リストを基にそれぞれの自伝にあたり、目的の記述を探し出し分析を行なった。 当初は300冊程度の検討を予定していたが、予想以上に作業は進み、当初予定していた数を大幅に超える400冊あまりを検討することができた。 関東大震災に関する記述を追いつつ、最終年度にはその分析を集中的に行なった。その結果、自伝における関東大震災のさまざまな捉えられ方や描かれ方が明らかになったと同時に、単なる出来事としての関東大震災とはまたちがった様相が浮かび上がっても来た。そのことによって、出来事としての関東大震災に関する研究にも大いに資するところがあると考えられる。本研究は、関東大震災に関する記述に焦点を絞り横断的に自伝を研究したはじめて試みであり、以後、その対象をさまざまな出来事(事件)に拡大することが可能である。その一歩としての意義は十分にあると思われる。
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