2011 Fiscal Year Research-status Report
ダックとコリアの比較研究に始まる「性」と「経済」から見た「水」表象の研究
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23652060
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
中川 一雄 岐阜大学, 地域科学部, 教授 (10155674)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 英米文学 / 表象文化 / 詩的想像力 / 文化唯物論 / イングランド近代 |
Research Abstract |
(1)ダック、コリアなど農耕詩のテクストと関連資料の収集と読解は、絶版本の一部も含めて6-7割程度予定通り進めた。未消化の部分は、英国に行かねば入手できない類の文書等が存在したためである。大英図書館などへウエッブ上でも資料検索し、関連する古書内容や古文書の把握に努めた。テクストの読解は、まずは「水」表象の比較的分類・分析を進めた。ダックやコリアなどの詩・言説に関しては、雨や川、池など自然の「水」と汗や涙など人間的・社会的「水」の対比的分析を進めた。その過程では、家父長的・男性優位の近世的ジェンダー概念と階級維持的な支配のイデオロギーとの謂わば合体が彼らの詩的言説を生み出した基底的な社会・精神構造として浮かび上がりつつある。(2)アン・フィンチなど他の女性詩人たちに関しては、資料が予定より収集できず、これも国内での研究の限界を示すものであった。ただし、国内で収集した資料から、本研究申請時には視野に入っていなかった詩人たち---たとえばメアリー・リーパーなど---の本研究に対する意義や関連性も新たに発見され、今後は研究対象に組み込むつもりである。(3)経済・社会史関係の資料は、和書・洋書ともある程度収集・理解を進めた。また、新しい視座から詩という文学的言説を分析・吟味するという点から、最新の批評理論関連資料も参照・吟味し、本研究の基本的な方法論を構築した。テリー・イーグルトンの最新の著作(『詩の読み方』など)やレイモンド・ウィリアムズの一連の著作(『田舎と都会』など)から、テクストの修辞的言説の文学性と社会性を読み解く立場の今日的重要性と「形式」に固執すること(フォルマリズム)の有効性を確認した。この点は、紀要論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究全体における初年度としての必要作業(研究遂行上必要な資料の段階的収集と第1段階の読解など)は、資料の入手に一部不足はあったものの、おおむね順調に進んでいると思われる。読解の作業が若干緩やかに進んでいるのは、本研究における基本的視点と方法論の確認・構築の作業が必要であったためと、研究以外の業務が予想より多忙であったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)国内大学図書館などに加えて、国外(英米)でも資料の収集と分析を進めたい。とりわけ英国では当該農村地域の現状と歴史的把握、および救貧法や人口統計的資料など社会の秩序や階層、性別関係の形成などに関連した資料の収集と把握に努めたい。またアメリカ合衆国では、文学関連の1次・2次的資料を豊富に所蔵している大学・図書館などへの調査・研究旅行を遂行したいと考えている。(2)「水」表象の文化誌的研究の一環として、本研究の第1段階(ダックやコリアたちの詩的言説の分析)の成果の発表と、それと平行して、普遍的・原型的・文学的表象としての「水」言説の現代的(モダニズム的)特徴も考察したいと望んでいる。これは、本研究の今日的意義の確認作業の一部となる。まずは、考察と発表に必要な資料のさらなる入手と読解・吟味に努めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品費:約65万円国内・国外旅費:約50万円資料整理・その他消耗品など:約15万円
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Research Products
(1 results)