2011 Fiscal Year Research-status Report
「イソップ寓話集」の流布と変容――イタリア・ルネサンスから日本の伝統へ
Project/Area Number |
23652068
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
伊藤 博明 埼玉大学, 教養学部, 教授 (70184679)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | イソップ寓話集 / イソポのハブラス / 伊曽保物語 / シュタインヘーヴェル / イエズス会 |
Research Abstract |
(1)ルネサンス期のイタリア(15世紀後半)から、文語訳『伊曽保物語』が天草で刊行された1610年代までに、イタリアのみならずヨーロッパ各地で刊行された「イソップ寓話集」について、系統別に分類した上で、その内容と特徴、またその変遷について調査研究した。 (2)シュタインヘーヴェル編纂『イソップ』(初版、1447年、ウルム刊)については、フランス語版(マショー版)、英語版(キャクストン版)、スペイン語版、オランダ語版が、それぞれ内容を幾分変えながら、15世紀後半から16世紀半ばまで200点以上の版を重ねるほど流布しており、先行研究者によって、『イソポのハブラス』と『伊曽保物語』の基本的な典拠であると指摘されており、それらについて調査研究をおこなった。 (3)イエズス会の教育課程における、古典古代に由来する寓話的・教訓的な物語の位置づけを、「イソップ寓話集」を中心に検討する。天草において日本のイエズス会士が「イソップ寓話集」を刊行した理由について理解するために、日本のセミナリオの教育における「イソップ寓話集」、ならびに西洋俗語文学の位置づけについて考究した。 (4)『イソポのハブラス』と文語体『伊曽保物語』に含まれていながら、上述のシュタインヘーヴェル編『イソップ』に見いだされない7つの寓話については、同編のスペイン語版、マルティン・ドープ系統の「イソップ寓話集」の諸版などと比較検討した。その結果、1541年刊行のスペイン語版が邦語版の原典の一つであることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は学術研究助成基金助成金が、結果的に2回に分けて交付されたために、海外の図書館における実際の調査はできなかったが、デジタル化した資料、マイクロフィルム化した資料を海外の図書館から取り寄せることなどによって、「イソップ寓話集」の基本的な諸版については比較検討することができた。とりわけスペイン語版において有益な発見をすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、「イソップ寓話集」の諸版について調査を進めて、詳細な分類を行うことを計画している。また、『イソポのハブラス』と文語体『伊曽保物語』の祖本の典拠についても、さらなる探究を通して、同定しうるように努めたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き、ルネサンス期のイタリア(15世紀後半)から、文語訳『伊曽保物語』が天草で刊行された1610年代までに、イタリアのみならずヨーロッパ各地で刊行された「イソップ寓話集」について文献資料を収集する。またイエズス会の教育課程・文化政策に関わる文献資料を収集する。
|