2011 Fiscal Year Research-status Report
等級的基準作製の観点から見た日本所在中国古籍鑑定研究
Project/Area Number |
23652076
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高橋 智 慶應義塾大学, 斯道文庫, 教授 (80216720)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 中国古籍 / 古籍普査 / 古籍鑑定 / 等級 / 日本所蔵漢籍 / 宋元刊本 / 古鈔本 / 明清刊本 |
Research Abstract |
日本に漢籍文化の基礎として輸入保存されてきた中国の宋時代以前の写本、また、宋・元・明・清時代の貴重な刊本(印刷本)について、中国で進行中の、「古典籍を等級によって価値分類する国家プロジェクト」に倣い日本に即した価値等級基準を試作、日本伝来の中国漢字文献を世界的共通価値判断基準によって分類整理するための基盤形成を目指し、中国国家図書館の協力を得て「古籍普査培訓講義」(基準判断を行う為の研修教科書)を入手、これに検討を加えて日本の実状に合うものに改変を試みる。また、中国の「国家珍貴古籍名録」第一・二集を得て日本の珍貴古籍所在の現状をこれに倣って試作を試みる。日本に於けるこうした貴重中国古籍を所蔵する機関の専門家にも協力を仰ぐ(静嘉堂文庫・国立公文書館・宮内庁書陵部等)。 また、日本所蔵本の特色を把握整理するために、日本と中国の典籍交流史、日本の典籍移動史等も相対的に研究を行う。この研究が日本独自の漢籍流通の価値を明らかにするものであり、中国の基準作製の課程をおおいに異なるところである。また、その研究の一環として、京都大学人文科学研究所の高田時雄教授にご講演をお願いし「明治期の古典籍流出」と題して、日本の漢籍が古来平安時代以来今日に伝わる意義や、その流伝にとって激動の時期となった明治時代、どのような人々の作為と努力によって、古籍が伝え守られ、所蔵を変えていったかの軌跡をたどり、流通の意義を論じていただいた。 日本的な鑑定基準の作製の基礎的な方向性を確立、今後の研究方向もこの二つの方向を充実前進させることと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度は震災の影響もあり、課題進行のスタートが遅かったことはあったが、幸い、中国国家図書館当局の協力もあり、必要資料や基準作製の方向性に向けた中国日本双方の実状の相違を勘案することに進展があったため、基盤作りの材料蒐集に成功したことが、本課題の順調な達成に向けての要因となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
実際に1級から5級くらいまで仮基準を作製し、日本所在の中国古籍でその等級に属する主要なものをあつめ、参考図録を作製、各級の基準の文章化も試みる。本課題終了後更に大きなプロジェクトに発展させるために、中途で完結させず、あくまで典型・方向性作りに徹し、文化庁の定める漢籍の文化財指定の実状を再確認・再構築する前段階との位置づけを持ちたい。余力があれば、中国では最も尊ばれる宋刊本の日本所在本の等級付けを可能な限りまで推し進めたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度は震災の影響もあり、研究計画の予定が後半にずれ込んだこともあって、中国図書館当局との交流の日時が定まらず、中国国家図書館の専門家による講演会実施が年度内の実施不可能となったことが、残金の原因である。従って、23年度使用計画中の残金分は、24年度に行われる講演会・シンポジウムに使用することとなる。 それを含めて、先ず、24年度は、専門家による講演会を数次開催し、日本所在漢籍の等級鑑定基準を作製する気運を醸成し、関係諸機関に協力体制のご配慮をお願いしていく。更に中国北京・上海に出張、中国国家図書館・上海図書館に本事業の協力を要請、専門家をお招きし、中国の国家プロジェクトの現状をご講義いただく。こうした講演の記録も作製する。中国から2回(各1名)招聘、日本の専門家に1~2回ご講演いただく。また、基準作製の試作本を作製。
|