2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23652081
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 正人 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (90337410)
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Keywords | インド・アーリア語 / サドリー語 / ボージプリー語 / サンスクリット語 |
Research Abstract |
平成24年度は、研究代表者とその他の者2名がそれぞれ1回ずつインドに出張し、連邦特別区デリー市、ジャールカンド州ラーンチー市、マハーラーシュトラ州プネー市、ウッタル・プラデシュ州ヴァーラーナシー市において現地のインド・アーリア語の調査を行った。 デリー市においては母語話者を対象にヒンディー語の文法調査を行い、ラーンチー市ではサドリー語の文法調査を、ヴァーラーナシー市ではボージプリー語の文法調査を行った。プネー市ではマラーティー語の母語話者が見つからず、バンダルカル東洋学研究所において同じくインド・アーリア語であるサンスクリット語とプラークリット語の文献調査を行った。 このうち、サドリー語については、動詞の受動態の一形式として完了形と同形の受身形があることに着目し、それが同じ地域で話されるドラヴィダ語族言語であるクルフ語に見られる、完了形とほぼ同形の状態受身形が成立する契機を与えた可能性を指摘した論文 "Stative passive in Kurux" として Festschrift for Professor Hiroshi Kumamoto (Tokyo University Linguistic Papers 33) に発表した。ボージプリー語の調査結果については、現在概要を取りまとめている。サンスクリット語の調査では、ヴェーダ韻律を中心として資料を収集し、現在それに基づいた論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
西部インド・アーリア語であるラージャスターニー語は、中央インド・アーリア系のヒンディー語と西部インド・アーリア語のグジャラーティー語の両方の特徴を併せもち、インド・アーリア語の発達過程に重要な示唆を含むと考えたため、「プリティヴィー・ラージ・ラーソー」など初期の文献を収集して文法の理解に当たっていた。しかし、文法をいまだ十分に理解できず、読解にも文法記述にも着手することができなかった。 東部インド・アーリア語であるサドリー語については、一定の理解には至ったものの、文法を記述するのに十分な材料を集められていない。 中央インド・アーリア語であるボージプリー語についても、いまだドラフト段階であり、成果公表までまだ時間がかかることが予想される。 以上のように、一部研究に着手できておらず、成果の公表も遅れている。包括的な言語要覧を目指したことで、却って調査が散漫になりがちであったためと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度であり、研究成果を公表することを最優先にする。そのために、しいて地点を増やして調査を行うのではなく、現地調査は論文作成上必要な範囲にとどめる。すべての調査言語について包括的な言語要覧を書く前段階として、まずこれまでの発見内容を掘り下げて、論文として発表することに注力する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ボージプリー語の追加調査のため、ウッタル・プラデシュ州ヴァーラーナシー市に一回調査に行き、サドリー語の追加調査のため、ジャールカンド州ラーンチー市に一回調査に行く。加えて、もしヒマーチャル・プラデシュ州のマンディー市周辺で北部インド・アーリア語の調査をする機会が得られれば、随時調査に訪れる。
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